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会話同好会  作者: 太郎
高校3年生
36/56

4月

 

「うーん、飽きた」


「何がですか?」


「人生ゲーム。2週間前はやりたくて仕方がなかったのに今じゃもうやりたいという気持ちすらなくなった」


「そりゃ、期間が開けば面白味も減りますよね。仕方がないです」


「そもそも、この壮大な人生をゲームで楽しもうとしたこと自体間違いだったんだ」


「それは飛躍し過ぎです。年末に人生ゲームを楽しむ家庭に微妙な雰囲気が流れます」


「いやね、人生とは波乱万丈じゃないか。川あり滝ありって言うだろう?」


「山あり谷あり、です。それじゃただの水遊びと修行ですよ」


「こんな風に後輩ちゃんに突っ込まれる僕の人生も波乱万丈だった」


「波乱万丈の意味は『物事の変化が激しく劇的なこと』です。はい、先輩の人生は波乱万丈でしたか?」


「まだ18年しか生きてないから分からないな」


「あ、逃げましたね」


「大体ね。人生ゲームだなんて、娯楽道具を作り出した人間は相当根性が曲がってると思う。だってさ、誰だって人生はそれなりに苦労してきたじゃん。その積み重ねを全て止まっていかずにルーレットの気分次第で飛んでいく。これって、人生というルールから外れていると思わない?」


「思わないです。これ、ゲームですよ」


「それを言われたら僕は意味がなくなっちゃう」


「確かにですね。『私達が存在する空間も1市民が書いた文章の中ですよ。外界に影響を及ぼすことのないただの登場人物ですよ』だなんて言われた日には全てが意味がなくなってしまいます」


「そう?それは、なくならないと思うよ」


「何故ですか?」


「きっとその文章は誰か彼か読んで1市民だけの物じゃなくなっている。つまり、僕らはまた別の場所で生かされているんだ」


「読んでないかもしれませんよ」


「その時は僕らの創造主が僕らの存在を意味あるものに変えてくれるよ」


「そうですね。例えば某有名サイトに投稿しておいて、10年後その幼稚な文章を酒の肴として笑うとか一番現実的じゃないですか?」


「ありえそう、あいつなら」


「さて。ここらで中断して置かないと唯一読んでくれてるかもしれない人が離れてしまうかもしれませんよ?もし私達が登場人物だ、と仮定したらの話ですけどね」


「じゃあ、どんなことをしたら閲覧数が増えるかを議題に会話しようか」


「そんなことをしたら余計閲覧数は伸びないでしょうね。私は嫌いではありませんが、好まれませんよ」


「やっぱ?じゃあ、ここで後輩ちゃんがストリップして思春期ボーイの心を掴んで閲覧数を増やすってのはどう?」


「会話しか私達にないのに、どうやって思春期ボーイのハートを射止めろと言うのですか」


「取り合えず、後輩ちゃんは黙ってて良いよ。僕が一人二役で実践してみるから」


「はぁ。そうですか」




「あっ、先輩。実は……何でもないです」


「どうしたの?後輩ちゃん。頬を染めちゃって。もしかして、僕という毒牙にやられちゃったのかい?」


「やっぱり、先輩はスーパーエリートですね。見抜かれちゃいましたか。白状します。私、先輩にハートを奪われましたっ」


「素直な乙女は嫌いじゃないよ。マイリトルガール」


「先輩っ、先輩のそういう所が好きなんです。先輩のせいで熟してしまったこの恋心、先輩、食べてくれますか?」


「……後輩ちゃんごと、いただくよ」


「先輩!!抱いてっ!!」




「……さぁて、どうだったかな?僕の大演技は」


「はい?音楽聞いてたので何も聞こえません。何か言いましたか?」


「ちょっ!!!さっきの僕の渾身のヤツ見ててよぉおっ!!!」


「興味がなかったので見る気にも聞く気にもなりもせんでした」


「ひっどぉぉお~い」


「それでは定時ですので」


「ん。またねー」



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