11月
「やあ、今日は素敵なNovember日和だね」
「こんにちは、先輩。英語の発音はマシになりましたが、使い方がテンで駄目ですね。11月日和とは意味が分かりません」
「へえ、11月ってNovemberっていうんだー。知らなかった」
「せめて意味を理解してから来てください。対処出来ませんよ」
「良いよ、一人で後輩ちゃん囲んでカバディしてるから」
「この上なく迷惑な一人遊びは止めましょう」
「カバディカバディカバディカバディカバディ……えーっ。楽しいのにー!後輩ちゃんもやろうよ」
「楽しいと思える先輩の脳内構造が分かりません」
「そりゃあ、人体は大きな謎だからね。一個人には分からないこともあるよ」
「妙に、秀才感出されると苛立ちよりも先に同情が出るのですが、これは自然の摂理なのでしょうか?」
「う、ううん……僕、いつも同情されてたんだ……」
「自覚なかったんですね」
「さあて、そんなことより、時期は11月!November!つまり秋!」
「つまり読書の秋とでも言いたいのですか?それじゃ、去年と何も変わらないですよ」
「え、今年も罵られて金的されて踏まれるの?やったー」
「それは……っ、たまたまです。あの頃の私は荒れてました」
「なら、先週僕の肋骨を折った後輩ちゃんはどれほど荒れていたんだろうね」
「折れてたんですか?」
「うん。だけど、後輩ちゃんからの愛情だと思ったらすぐに回復しちゃった。うーん、残念。でも、後輩ちゃんの愛は僕の体に刻み込まれているよね」
「死んでください。愛なんて先輩に刻んだことはありません。むしろ、玉ねぎを微塵切りする方が愛持って行ってます」
「恋のライバルは玉ねぎ!?」
「ライバルですらありません。貴方は不戦敗です。エントリーで名前上がった瞬間に失格です」
「スゴい可哀想!エントリーしてあげたんなら一回で良いから戦わせてよ!!どんな卑怯な手でも駆使して汚く勝ってやるから!!」
「……純粋に勝とうという気はないんですか。屑ですね」
「褒・め・こ・と・ば☆」
「それ、流行ってるんですか?」
「いや、もう流れ去ったけど何とか川岸掴まって流れを戻そうとしてるところ」
「そのまま手を離して川の流れに沿って落ちて、永遠に姿を現さなければ皆幸せになります」
「じゃあ、後輩ちゃんの守護天使になるね」
「何がどうなって天使になってるのですか。意味が分かりません」
「秋だから」
「結局そこですか。でも、意味は繋がってませんよ」
「秋、秋、食欲の秋。ということでドーナツを持ってきましたー。どんどんパフパフー」
「先輩、以前触れた通り私達が住む世界は北海道です。つまり、外は既に雪が積もってます。それでも秋でいきますか?」
「冬。冬。食欲の冬。ということでドーナツを持ってきましたー。どんどんパフパフー」
「何事もなかったかのようにテイク2行ってますけど、食欲の冬というのは初めて聞きました。絶対今考えましたよね」
「皆お雑煮やらおせちやら沢山食べるしょ?だから、食欲の冬だよ!」
「もっともらしい適当な理由ありがとうございました」
「まあ、良いよ。口実つけて後輩ちゃんにドーナツを持ってきたかっただけだし。あ、チョコ好きだったよね?」
「え?まあ、はい。好きですけど……先輩にそのこと一度も言ったことないですよね?」
「うん、だけど後輩ちゃんのことなら何でも知ってるよ」
「…………」
「あれぇ?後輩ちゃん?どうして急に入り口まで逃げていったの?」
「今程先輩を気持ち悪いと思った時はありません。先輩は本当に、ストーカーですね」
「いや、違う違う。ただ後輩ちゃんのことを好きなだけだよ☆」
「…………」
「あっれぇ!!?後輩ちゃんが無言で部室から出ていったぁ!!なんで、何で!??あっ!まったねー!!」




