8月
「ってことで、海だー!」
「何が『ってことで』ですか。ここは海と縁も関係もない市の図書館ですよ。大声出すのは止めて下さい」
「折角のデートなのにつれないなぁ。先輩が泣いちゃうぞ?それでも良いのかい?」
「私の半径三メートル圏内に入らない約束を守れるのでしたら、どうぞご自由に泣くなり発狂するなりして下さい」
「それは無理な話だね。後輩ちゃんの体内を循環して、酷使された不要物である二酸化炭素を吸うことが出来ないと僕は死んでしまうから」
「心の底から気持ち悪いです。そのまま大量に二酸化炭素を吸い続けて死んで下さい」
「一種のプロポーズかな?喜んで受けるよ。だが、プロポーズは僕の方からしたいな。だから、君からの告白は一度なかったことにしても良いかい?」
「精神科行きましょうね」
「僕は後輩ちゃんがラーメンのメンマになったとしたら海苔となって永遠に守り続けるよ。だから、結婚しよう」
「これ程までに読解不可能かつ、いみ不明なプロポーズは、どの文献で調べても出てこないでしょうね。とりあえず、こちらこそ願い下げでございますので、とっとと夏休みの課題を終わらせて下さい」
「うーん。ツンデレ。でも、好き」
「今日は先輩のために勉強会をしているんですよ?自覚して行動して下さい。大体、何で夏休み課題を最終日ギリギリまで取っておくんですか。触れれない事情でもあるんですか」
「理由、か。それは神の作った唯一の失敗だろうね」
「意味分かりませんし、失敗は貴方の頭です。ほら、私が手伝ってあげている間に終わらせなさい」
「ううー」
「このままだったら、また、二年生になることになりますよ。三回目ですよ?さすがに、それは有り得ませんよね」
「うむ。後輩ちゃんと一緒のクラスになれないのは嫌だから、頑張るよ」
「理由が下心で溢れてますが、頑張るのなら仕方がないですね。許してあげます」
「そうして、僕は後輩ちゃんの操を奪うことに成功したのだった」
「奪わせませんよ、死んで下さい」
「じゃあ、いただきます」
「あげませんよ、死んで下さい」
「ええー、どうすれって言うのさー……って、その『死んで下さい』ってコロ助のナリ的感じで使ってるけどとても物騒だよ?可愛い、萌え萌え要素はほとんどないよ!?」
「ほとんどって、微かにはあるんですか。そもそも、私に可愛いという不釣り合いな言葉を使わないで下さい。汚れます」
「いやっだー。汚れるだなんてそんな。僕が近づいた時点で浄化してるから、君は綺麗だよ☆」
「ああ、貴方の頭には星が在住しているんですよね。忘れてました。すいません」
「へへっ、後輩ちゃんったら、誉め上手なんだからー!」
「どこを褒めたと錯覚するんでしょうね。いい加減にしませんと、私帰りますよ?」
「うわっ!それは、ダメ!ちゃんと勉強するから勉強という悪魔に僕を放り込まないで!?」
「よく、まあ、この学校入れましたよね。一応進学校なんですよ?うちの高校」
「それはー……実力?」
「夢は寝てから言いましょう。はい、それでは勉強再開です。30ページ開いてますか?」
「くそう。悔しからずか30ページを開いていたぜ……」
「先輩、勉強する気ありませんよね。先輩がそんな態度ならこちらも定時を早めてあげますよ。それでは、帰ります」
「えっ!や、えっ、ってもう後ろ姿!??まだ、2時過ぎだけど……またねー!!」




