7月
「後輩ちゃんって…本当に可愛いねー…」
「今日一発目の台詞がそれですか。先輩は心の奥までチャラ男成分で出来ていますね」
「これは本心だよ。だって、後輩ちゃんがポニーテールにしてるんだから!!」
「そう言えば先輩はポニーテールにはぁはぁする人でしたね。気持ち悪いです」
「ま、そうだけど…それは肯定するけど別の理由があって…」
「否定して欲しかったです」
「前回の活動で話した『7月=ポニーテールだよね』ってことを覚えててポニーテールにしてくれたんでしょ?」
「……」
「だったら、僕すっごく愛されてるってことだよね!?」
「世間一般的に知られている勘違い女という奴も先輩を見たら恐れおののくと思います。あと、無言は肯定の意と言いますが違うのでよく覚えてて下さい」
「つ、つまり僕は愛されてるってことだよね…いやん」
「くねくね禁止です。何度言えば分かるのですか。そして、人の言葉をちゃんと理解する脳を持ち合わせていない先輩は屑で虫けら以下です。それどころか虫けらに申し訳ない位です」
「後輩ちゃんの愛のムチが痛い…ううっ」
「愛の、ではありません。ただの、ムチです」
「なら後輩ちゃんは僕の女王様だね。細長いヒールで僕を踏みながらムチを振るうんだよね?」
「先輩の脳はピンク色ではなくて濃黒ですね。これ以上にない位の黒です。汚れきっています」
「この汚れを拭い去ってくれるのは後輩ちゃんだけだよ。マイハニー」
「なれなれしく触らないで下さい。あと、先輩に触れられると私まで穢れてしまうのでどこか行ってくれませんか」
「ぶー!じゃあ、離れるついでに言うけどさ。後輩ちゃん。今日何かあったの?」
「な、ぜですか…?」
「だって後輩ちゃんの愛のムチがいつも以上に激しく振るわれてるんだもん。でもって、それを受けてる僕よりも後輩ちゃんの方が辛そう」
「無駄な観察眼ですね。それを私に発揮しても意味はありませんよ」
「無駄じゃないよ。後輩ちゃんにとっては大事な大事な悩み事を抱えてるんでしょ?僕にだけ教えてよ。誰にも言わないから」
「女子ですか。そういう馴れ合いは好ましくありません。でも、言って…あげます」
「ん」
「二回目の二年生で二回目の前期中間テストだというのに赤点ぎりぎりの点数をとっている男の人の人生が心配で心配で、夜も寝られないのです。私がどんなに頑張って勉強を教えたとしても本人には通じていなくて意味がないのです。そのせいで私は疲れているのです」
「むむっ…その男の人が羨ましい!後輩ちゃんに心配されてるなんてぇーって、それ僕じゃん!?」
「やっと気がついたのですか。遅いです」
「そ、そんなー。後輩ちゃんが僕のことを考えすぎて寝られない位になっているなんて…僕は罪作りな男だ」
「はい。先輩は罪人です。死刑です」
「美しすぎるが故…ああっ!」
「……その精神力、気持ちが悪いですね。大体私の言葉使いが悪くなるのを自分のせいだと考えないことが原因なんですけど」
「褒めるなって☆」
「定時なので帰ります」
「ああっ!ウインクした目から飛んでった☆が無惨にも後輩ちゃんには届かなかったのか!?……そう言えば後輩ちゃんのポニーテールの理由聞けなかったけどあれって本当に僕のためなのかな?」




