6月
「はーい。雨が降ってるねー!」
「それは梅雨ですから」
「なーんか、ジメジメしてるね!」
「それは梅雨ですから」
「もうっ。後輩ちゃんったらボキャブラリー少ないなぁ。眼鏡は頭が良い。これは当たり前でしょ?」
「先輩は頭の色と比例して馬鹿さ加減が増してますね」
「ありがとう」
「先輩と話すと呆れます。まあ、良いですが今日は何をするのですか」
「今日は6月だからね。6月らしいことをしよう」
「6月らしいこと…梅雨だから外で遊ぶ、とかですか?先輩の幼稚な頭だったら有り得そうです」
「ドキッ!?」
「まさか…本当に遊びに行くつもりだったのですか」
「遊んで何が悪い!?」
「逆ギレはみっともないですし、ここは会話同好会ですから遊びに行きませんよ」
「くーっ。でも正論だから返せない…」
「では私から話題を振ってあげますから返しなさい。先輩は雨の日は何をしていましたか?」
「勿論外に出て蛙をハンティング」
「大体想像出来てました」
「あ、でもね。蛙だけじゃなくってナメクジも捕まえてるから」
「誇らしげな表情にイラつきます」
「そー言う後輩ちゃんは何するのさ。ハンティング以外のこと出来ないでしょ」
「発想が安直です」
「だってぇ」
「…私は、雨の日もそれ以外の日も暇な時間は勉強しかしてません」
「それ、自慢?」
「自慢ではありません。ちょっと自慢っぽくなってしまいましたが違いますから」
「あ、照れてるね」
「五月蝿いです」
「自分でメガネちゃん発言しておいて照れて顔を赤くするなんて可愛すぎるよ。反則だよ?殺す気なの?」
「違いますし、何故その結論に行き着くのか分かりません。事実を言っただけで私は殺人犯になるのですか」
「後輩ちゃんになら殺されても良い」
「両手を広げたって私はその小汚ない胸に飛び込む訳ありません。なので、そのまま『僕は鳥さんになるんだ!』とか頭のおかしいことを言ってその窓から飛び降りて下さい」
「たった一つの動作と言葉でここまで罵られることは初めてだよ。それに早口過ぎて最後の方は褒めてるのかも分からなかったよ」
「先輩のその耳と頭があったら人生はどんなに楽しくなるんでしょうか?」
「それだけじゃ足りないよ。後輩ちゃんがいないと楽しくならない」
「はぁ…」
「何回喘ぐの?」
「ため息=喘ぎ声という思考回路はいい加減卒業して下さい。だから留年するんです」
「むむっ。痛いところを突かれたなぁ」
「事実を述べたまでです」
「まあ、そういうところが可愛いんだけど」
「はあ。気持ち悪いです。それでは、…定時なので失礼します」
「はーい。またねー」




