2話
「ハァハァ、苦しいよ」
「修、しっかりして」
「残念ですが、今の医療では修君の病気を治すことはできません」
「…そんな」
先生と両親の会話を偶然、聞いてしまった僕は夢中でその場から逃げだした。
どれくらい離れただろう建物の壁にもたれて僕はしゃがみ込んで泣いてしまった。
「うっ、僕の病気は治らないの?」
しばらく泣いていると人の気配がして顔を上げると1人の女の子が見ていた
「何を泣いてりゅの?」
「君は?」
「私は実結って言うの、お兄ちゃんは?」
「…修」
「どうちてここにいりゅの?」
「僕は病気だから一生治らない病気だからここにいるんだよ」
「治らないの?」
「治らないよ、ずっと」
「じゃあ実結が治してあげりゅ」
「えっ?」
その女の子は両手を広げ何かを呟きながら僕の頬に触った、その瞬間僕の体の中が暖かくなった
「これでお兄ちゃんは大丈夫だね」
「えっ?」
僕は何が何だかわからず戸惑っていると女の子はにっこりとほほ笑んだ。
「実結~、どこにいるの?」
「あっ、パパ達が呼んでりゅ、じゃあねお兄ちゃん」
「え、ちょ、待って…」
手を伸ばしたがその女の子は走っていってしまった
「修、どこにいたの?心配したのよ?」
「ごめんなさい」
黙っていなくなってしまった僕のことを心配した両親によって病院に連れ戻された僕に念のため検査をすると驚いたことに病気は治っていた
先生がいなくなった後に両親に聞かれた僕はさっき会った女の子の話をした
「修、いったい何があったの?」
「実結って女の子が治してくれた」
「!!」
僕の話を聞いた両親は一瞬、考えた後、真剣な顔つきで僕に話しかけた
「修、よく聞いてそのことは誰にも言ってはいけないわ」
「何で?」
「それがその女の子の為だから、たとえ家族だろうが決して言ってはいけないよ」
「うん、わかった」
疲れて眠ってしまった修の髪を撫でながら椅子に座っている男に話しかけた。
「あなた、修が治ったのって紡ぎの力のおかげかしら」
「十中八九そうだろうな」
「でも、紡ぎの力を持っていた美咲は……」
「そうだな、でも修が治ったのも事実だ」
「あなた、紡ぎの力を持つ実結って女の子は美咲の……」
「ああ」
「美咲は無事でいるのね」
「そうだな、彼奴と一緒に無事に逃げられたんだな、だが紡ぎの力は奴らに知られては大変なことになる」
「そうね、あの時と同じことを繰り返しては……」