1話
「ねぇねぇ、みてみて。ねこたん、げんきになったの」
女の子は腕の中で小さな子猫を抱いていた、先ほどまで弱々しかった子猫は今は元気に泣いていた
「また、無意識に使ってしまったのね」
「駄目だよ、その力を使ってはいけないよ」
「どうして?」
首を傾げて聞いてくる女の子に男は諭す
「いいかい、本当はしてはいけないことなんだよ?紡ぐということはその者の人生を変えてしまうから…いいね決して使ってはいけないよ」
「うん、パパ」
「…あなた」
「わかっている、この子の為だ。この力は記憶と共に封じよう」
「そうね、それしかないわ。私達は一緒にいてあげられないから」
男は女の子の額に指を当てて力を込める
「パパ、ママ?」
「ごめんね・・・」
指が額から離れると女の子はゆっくりと目を閉じた
「――様、そろそろお時間です」
「ああ、わかっている。くれぐれもこの子を頼んだぞ」
「畏まりました、命にかえても必ずお守りいたします」
2人は女の子を託すと大事そうに抱き抱えられて、その場を後にする女の子をただ、ただ見つめていた
一緒に入れば巻き込まれてしまう、紡ぎの力を悪用しようとする者たちに・・・
少しでも長く普通の人生を送って欲しい・・・
「――幸せに生きて」
「――幸せに」