タイトル未定2026/07/14 11:57
日本の民話風のホラーポエムに挑戦してみました。
悲しい恋の話です。
満月さえも凍える冬の夜空
凍りついた湖岸に立つ一人の男
鏡のような湖面を踏みしめ歩き出した
真っ直ぐに前を見つめ 凍った湖面を
黙々と歩き続ける
全ては死んだ妻に 再び出会う為だ
もう一度妻に会えるなら 全てを投げ捨てても構わない
男はひたすら凍った湖面を歩き続けた
やがて湖の真ん中まで来ると 彼は一本の笛を取り出し一心不乱に吹き始めた
湖上に物悲しい調べが ゆっくりと流れ続ける
[凍てつく満月の夜 湖の上でお前の自慢の笛を吹き続けるならば亡き妻にに会わせてやろう]
冥界の王と交わした約束
死んだ妻に会えるならば どんな犠牲を払っても構わない
男は心を込め 一心に笛を吹き続けた
どれ位経ったころか
湖上の彼方に一つの 青白い炎が揺らめきはじめた
[来た!]
男は確信し更に笛を吹き続ける
炎はゆっくりと近づき やがて男の前で妻の姿になった
[愛しい人……ようやく会えたね]
妻の手を取り 強く抱きしめる
でも死んだ妻に会えるのは 凍てつく満月の夜 湖の上でだけだ
夜明け前には妻は再び 冥界に帰らねばならない
[厭だ!妻を帰したくない!]
逢えば逢うほど狂おしさは募る
数回目の逢瀬の時 遂に男は禁を破った
冥界の王との約束を違えたのだ
彼女の手を引き強引に岸辺に戻る
[さあ今なら大丈夫だ 二人の家に帰ろう]
男は岸辺に立ち妻の手を握る
妻は一瞬戸惑うが やがて諦めたように そっと岸辺に足を降ろした
その刹那!
ビュッという突然の強風とともに 妻の体は雪と変わり 真っ暗な空の彼方へと消え去って行った
[貴方……やっぱり……
ダメでしたね……]
心の何処かで 妻の声が聞こえた気がした
完全に心がひび割れてしまった男は
いつまでも その場に立ちつくしていた
夜が明けた後 村の人達がみたものは
湖のほとりで凍てついたまま立っている男の亡骸だった
そしてその腕の中には亡き妻の骸骨だけが しっかりと抱きしめられていたと言う
ギリシャ神話の琴座の伝説を、日本の民話風のホラーポエムへとアレンジしてみました。




