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忘れられた記憶  作者: ヒカリ


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第一章:忘れられた記憶

渋谷の夜。17歳の少年、蒼木シロは満月を見上げながらビルの屋上に立っていた。だが突然、街も時間も人も凍りつく――その静寂の中で、シロは未知の力と運命に目覚める。妹ユイとの穏やかな日常と、幻想の迷宮に導かれる非日常が交錯する、少年の覚醒と戦いの物語。

2025年4月17日、20:10。場所:東京・渋谷区。夜。

蒼木シロは黒い瞳を満月に向け、ビルの屋上に立っていた。街は闇に包まれ、下からの騒音はまだ消えていない。しかし、シロの心は静かだった。上から見下ろす渋谷は、特に夜になると美しく、街の明かりが灯り、人々が慌ただしく歩く姿は、不思議な安らぎと内なる静寂を与えてくれた。


だが、突然――全てが変わった。視界が暗くなり、心臓が速く打ち始めた。驚きが全身を走る。街全体――時間も、人も、鳥も――すべてが凍りついたかのようだった。

しかし、私は――この静寂の中で目覚めていた。


周囲には理解しがたいほど強力なオーラが漂う。そして一瞬にして――地面から空まで光が伸びた。その瞬間、心臓がまるで檻の中で跳ねるように感じ、体が力を失った。何が起きているのか理解できなかったが、これは普通のことではなかった。


「シロ兄、起きて!」

聞き覚えのある声が、私を現実に引き戻した。


「今、何時だ?」とシロは尋ねる。

「9時20分です」とユイが答える。

「ふぅ…もう少し眠れるかな…」



---


第1章補足:シロとユイの背景


シロは17歳。学校を卒業し、現在は自宅でプログラマーとして働いている。雪のように白い髪、深い黒の瞳――その中には秘密が隠されている。瞳の静けさには、苦悩、忍耐、そして計り知れない力が宿っている。誰も彼と目を合わせることはできない――まるで心を読むかのように。


仕事はオンライン中心で、外界と距離を置く生活を好む。


ユイはシロの15歳の妹。明るい銀色の髪、いつも優しい瞳を持つ。まだ学校に通う年齢で、両親は別の国で働いている。シロとユイは幼い頃から祖母に預けられ、両親をほとんど覚えていない。祖母も数年前に亡くなり、それ以来二人はこの世界で孤独に生きている。


しかし、シロは妹のためにも、生きるためにも戦うことを選んだ。働き、生活し、心の奥底で何かを感じている――この世界は普通ではない、そして自分も普通ではない、と。


シロは冷たい水で顔を洗った。鏡に目を向けると、心の奥に奇妙な圧迫感を覚えた。息が詰まるように感じる。ゆっくりとドアを開け、外へ足を踏み出した。


空気は…変だった。澄んでいるが、見慣れない。通りは静まり返り、人々の視線は他人行儀で、周囲の建物もどこか歪んでいるように見える――まるでこの渋谷は昔の東京ではなく、別世界のようだった。


「ここ…東京じゃないのか?」とシロは小声でつぶやき、胸の高鳴りを感じた。


その時、ユイの声が聞こえた。


「お兄ちゃん?大丈夫?どうしたの?」


シロはユイを見つめた――彼女はユイだ、しかし…顔つきが少し違う。瞳には見慣れた温もりがあるが、その奥に隠された頂があった。


「ここは普通の東京よ…それともお兄ちゃん、疲れてるだけ?」

ユイは穏やかに微笑んだ。


しかしシロは、その笑顔の裏に嘘を感じ取った。


周囲を見渡すと、すべてが見覚えのある風景なのに、同時に異質だった。建物は同じでも、道も人も同じでも、内側の感覚がここはもう以前の東京ではないと告げていた。


通りを歩く人々は顔がなく、視線は空虚で、歩き方も奇妙だった。シロは胸を押さえ、深呼吸した。


慌てて家に入り、心臓はまだ早鐘のように打ち、頭は少しぼんやりしていた。彼は頭を振り、キッチンを見た――そして目を疑った。


ユイがキッチンにいた。テーブルの上には湯気の立つティーポット、ユイは慎重にカップにお茶を注いでいる。


「ユイ…?」とシロはささやく。

ユイは微笑んで答えた。

「はい、お兄ちゃん?」


シロは数歩前に進み、驚きで立ち尽くした。


「だって…さっきまで外にいたじゃないか。私と話してたのに…」


ユイは少し驚き、そして優しく微笑んだ。


「お兄ちゃん、疲れてるのよ。夢を見たのかもしれないわ。さあ、お茶を一杯どうぞ。落ち着くまで一緒に飲みましょう。」


シロは黙った。胸の奥の奇妙な圧迫感が少しずつ和らいでいくようだった。ユイはいつもこうして彼を静めてくれる。


テーブルに座り、カップのお茶の湯気が部屋に温かく、馴染みある香りを漂わせる。外の異世界のような空気は別世界のように遠く感じられた――しかし、この小さなキッチンで、シロは初めて生きている実感を味わった。


ユイがお茶をかき混ぜながら言った。


「覚えてる?おばあちゃんはいつもお茶を二度入れて、最後に少し蜂蜜を入れてくれたのよ…あなたは『甘い薬みたい』って笑ってたわね。」


シロは微笑んだ。胸の重さが少し和らいだ。思い出は、この世界にもまだ温もりがあることを思い出させた。


シロは窓際のテーブルに近づき、そこにあるアルバムを手に取った。シロとユイが映る写真が、幼い日の甘い瞬間を映していた。指でページをゆっくりめくり、心に忘れられない一瞬を思い出した。


…春の陽光の中、シロはまだ書き方を覚えたばかりの子どもだった。祖母はいつも微笑みながら隣に座っていた。手の中のペンをシロに握らせ、こう言った。


「一文字一文字は、心の中の気持ちを紙に映すための道よ。好きなように書きなさい、でも心を隠してはいけないわ。」


シロは「ユイ」と書いた。文字は歪で子どもらしかったが、胸の高鳴りが込められていた。祖母は微笑み、首をかしげながら言った。


「とてもきれいに書けたわ、特に『Y』の文字は愛を表しているのね。」


シロは笑い、うっかりインクを手にこぼした。祖母も笑った。二人でお茶を飲み、お菓子を食べ、子ども時代の最も輝かしい時間を楽しんだ。


アルバムのページはゆっくり閉じられた。シロは深呼吸し、祖母の声がまだ頭の中で響いているようだった。しばし座り、静かに心を落ち着ける。


やがて、再び立ち上がった。静かで静謐な家――しかし、心の中には小さな温もりがあった。


シロは作業机に近づいた。コンピューターはまだついており、黒い画面には開きっぱなしのコードが表示されていた――前回書いた場所で止まったままだ。


シロは椅子に座り、画面をじっと見つめる。目にはわずかな疲労と、止まらない思考が浮かんでいたが、手はゆっくりと動き始めた。コードが再び息を吹き返す。


キーボードを打つ音は馴染み深く、モニターの光は安心感を与えた。この世界はもはや見知らぬものではなく、彼の仕事場であり、彼を支える輪であった。


しかし、突然――部屋が暗くなった。


「カチッ」


という音とともに照明が消えた。


コンピューターのモニターも消え、ファンの音も止まった。すべてが突然の静寂に包まれる。


シロはしばらく黙ったまま深呼吸し、椅子に寄りかかり目を閉じた。


「ふう…少なくともファイルは保存できた…」と小さくつぶやいた。


その時、暗闇の中で、外から聞こえる風と下の街のざわめきだけが耳に届いた。しかし、この静寂は…ただの停電ではなかった。


シロは内側から何かがおかしいことを感じた。ライトの消失――単なる出来事ではなく、心の奥で何かが動き出したのだ。


彼はゆっくりと窓の方に近づき、外を見た。渋谷…もう以前の姿ではなかった。まるで何か間違った世界のようだ。


シロは違和感を覚え、視線を渋谷に向けた――見慣れた街なのに、どこか忘れられた記憶のように感じられた。通りも人も車も一見普通に見えるが、内側で理解できない引力が彼を渋谷に向かわせていた。


渋谷はいつも通り美しい――明るい光、人であふれ、動きの中に生命の躍動があった。車や人々の音は、特別な音楽のように聞こえた。


しかし…何かが欠けていた。目には見えないが、心で感じる空洞があった。


シロは顔を上げ、高層ビルのひとつを見つめる。その場所が、なぜかとても見覚えがあった。知らず知らずのうちに、彼はそのビルに歩みを向けた。


やがて屋上にたどり着く。上から渋谷の景色を見ると、その美しさは再び目に映る――しかし今回は単なる街の美しさではなく、内面の感覚を呼び覚ますものだった。ちょうど彼が夢で見た景色と同じだった。体が少し震えた。


突然、背後から柔らかく落ち着かせる女の声が聞こえた。


「ここにいるわ。安心して、すべてうまくいく。」


シロはその声に驚かなかった。むしろ、心が温かくなるように感じた。驚きもせず、その声の中には、以前から知っている、忘れかけていた感情が込められていた。言葉は心に光を与え、何かが再び彼の内側に入ったかのように軽く感じた。


突然、シロの内側に巨大な力が湧き上がった。体が重さを感じず、心臓はまるで爆発しそうだった。その力――忘れていたが、心の奥にあった真実だった。そして、ついに彼はすべてを思い出した。


その時…空気の中に、独特で温かく、心を揺さぶる声が響いた。周囲の静寂を破り、心に届いた。


「シオリ…?どこにいるの?」とシロは夜空に向かって問いかけた。


軽い風が吹き、まるでその言葉が風に乗って反響するかのようだった。


「私はいつもあなたと一緒よ。あなたならできる。さようなら…」


シロは恐怖に震えながらも、心がその声で満たされる感覚を覚えた。


彼の中に一気に巨大な力が宿った。体は感じず、心だけが躍動した。この力――忘れていたが、心の奥にあった真実。ついにすべてを思い出した。


その時、空に独特で神秘的な光が現れた。地面から天まで伸びる眩しい光が、シロたちの前に道を示しているかのようだった。


三人――シロ、シオリ、そして気絶したユイ――は無言のまま、心の中で無数の質問を抱えながら、その光へ向かって歩き出した。暗く静かな東京の通りを進むたび、足音は闇に反響し、周囲の静寂が心に独特な圧力を与えた。光はまるで彼らを引き寄せる磁石のようだった。


やがて、光の源にたどり着くと、その輝きは天空と地上を繋ぐほど強烈で圧倒的だった。シロの胸は未知の興奮と好奇心でいっぱいになった。


「なぜここに…?」と彼はささやくように前へ進む。目は好奇心で輝いていた。


しかしその瞬間、光の頂上に暗い影が現れた。形を成し、やがて顔を持つ――それは悪魔だった。その瞳は暗く、怒りと驚きが混ざり合った光でこちらを見つめている。


シロは立ち止まった。視線は悪魔に釘付けだった。


「お前は…?」


悪魔はしばらく沈黙した後、奇妙な震える声で言った。


「動いている…?これは…どういうことだ?私は全ての東京を停止させていた。お前たちは凍った人々の中にいなかったのか…?」


悪魔は目を細め、シロとシオリを見つめた。


「なるほど…お前たちは普通の人間ではないな。内に…力を持っている。」


シロは怒りを隠さずに答えた。


「そうだ、この災害、この静寂…お前の仕業だな?」


悪魔は少し首をかしげ、皮肉な笑みを浮かべた。


「正解だ。そう、私の仕業だ。そしてお前たちは、私の計画を妨げる存在だ。だから“幻想”と呼ばれる迷宮に送り込む。」


彼は手を上げると、周囲の光は闇と混ざり、静寂と共に叫び声のようなものが漂った。


「この迷宮から帰った者はいない…さあ、見せてもらおう、お前たちがどう変わるかを。」


その瞬間、三人の周囲は完全に闇に包まれた。


すべての出来事はこうして起こった。そしてシロは、幻想の迷宮の中で、自らの記憶と力を取り戻したのだった。

続編は毎週土曜日に投稿されます。

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