終わらせ屋さんとの出逢い(5)
こういう時のために受け身の練習でもしておけば良かったと今更のように麻生は思う。地面に叩きつけられる衝撃に耐えられるのだろうか、どうせならその前に気絶でもしてしまいたいと願ったが、その衝撃はやってこなかった。不思議に思って固く閉じていた目を開けると、ちょっと辛そうな顔をしている桃里が視界いっぱいに映る。所謂、お姫様抱っこなるものをされているようだ。
「……重い」
「え、あ、すみません。助けていただいてありがとうございます」
一応平均体重なのだが、本当に失礼な人である。まあでも命があるのはこの人のおかげなので一応感謝はしておくことにする。
「どういたしまして。もうこの世界は十分に堪能できましたか?」
「それはもう十二分に」
「そうですか、ならよかったです。では元の世界に帰りましょうか」
「私はどうすればいいですか?」
「先程のように手を繋いで私が詠唱すれば、帰れますよ。……あ」
「あ?」
「……腰を……やってしまいました」
「え」
麻生は桃里の手を取って地面に降り立ったのだが、どうやら桃里は腰を痛めたらしく地面に蹲ってしまった。
立たなくても魔法は使えるようだが、あまりにも見ていて痛々しそうだったので、麻生は桃里の肩を抱いて逆の手で手を繋ぎ直した。なんだか先程の格好付けが台無しになったような構図だが、その原因を作ったのは麻生なので複雑である。
「星の環、時の調べよ。我らを故郷へ導きたまえ____」
そうして元の世界に帰った麻生は桃里に、眼鏡の奥の目を嫌味に細めたあの顔でこう言われたのである。
「責任を取って僕の館で働いてもらえますか?」
そこから話は冒頭に戻り、麻生の労働(召使い)生活が始まるのだった。




