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【連載版】勘違い令嬢は、奥手な婚約者を押し倒した  作者: 笛路 @書籍・コミカライズ進行中


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6/20

6:めちゃくちゃ愛されていた!

 



 気付けば、爆発した感情に任せて沢山の文句を言ってしまっていた。

 

 エルネスト様が私にしてくれなかったこと。

 私が勇気を出してやったのに、スルーされたこと。

 子ども扱いして、女性として見てくれていないこと。

 友人たちに奥手すぎると言われていること。

 実は男性の機能が……とかまで疑われていること。


 エルネスト様がスンとした顔になったのを見て、やらかしてしまったと気付いたが、手遅れそうだった。


「…………リリ、とりあえずソコから下りて」

「キスは?」

「今は我慢して!」

「…………はひ」


 思ったよりも真剣な声で怒られてしまった。

 目が据わっているし、表情がない。待ち合わせのときによく出している『近寄るなオーラ』ともまたちょっと違った雰囲気だ。

 初めて見るエルネスト様にわずかに心臓が跳ねた。新たな一面が見られた嬉しさで。

 

 のそのそと動いてエルネスト様の上から退くと、エルネスト様にスカートの裾をササッと整えられた。こういうところが本当に紳士すぎる。ちょっとくらいクラッとしてくれてもいいじゃないかと頬を膨らませていたら、あれよあれという間にエルネスト様の膝の間に座らされていた。

 後ろ向きでギチギチに抱きしめられている。


 これはいわゆる恋人たちの後ろ抱きホールドというやつだろう。定番はここから顎クイッの、ちゅーだと友人たちからは聞いてる。が、エルネスト様のことだ、それは絶対にないだろう。


 あと、されて初めて分かったが、この格好は木陰とはいえ、ちょっと暑苦しい。そんな不躾なことをチラッと思ってしまった。それだけは大変申し訳ない気分だ。

 

「リリ……君がこんなことをするなんて。いったい誰に何を吹き込まれたんだ」


 エルネスト様の声が妙に剣呑で、ヤバい空気が流れている気がした。正直に話しなさいと言われて、流石にもう誤魔化せないかと諦めた。


「半年しかないって、なんの話なんだい?」

 

 お腹の前で組まれているエルネスト様の手をタップして緩めてもらい、くるりと体を反転させた。

 開けたままの襟元から胸筋がバーンと見えていて、あまりにもな色気にあてられて、またもや全身が熱くなりだした。

 いまはそれどころではないのだと自分に言い聞かせ、深呼吸。

 エルネスト様のエメラルドグリーンの瞳をジッと見つめ、意を決して伝える。


「私、あと半年で死んでしまうそうです」

「…………………………は?」


 たっぷりと溜め込んででてきたのは、その一言だけだった。しかも、なにをアホなことを、的な顔で。


「両親が執務室で話していたんです……っ、お母様は…………泣いていました」

「……うん」

 

 何の病気なのか分からない不安と、時間がないことへの不安、両親を悲しませしまった申し訳なさで、胸が苦しい。

 人の温もりが欲しくてエルネスト様にソッと体を寄せると、柔らかく抱きしめてくれた。ゆっくりと背中を撫でてもらったことで、また涙腺が緩む。


 両親が話していた内容が、いつまでたっても手を出してもらえない不安を増強させた。あと半年しかないのに、と。


「本当に半年なのかい? ちゃんとご両親に聞いた?」

「まだ、です」


 エルネスト様が何かを考えているようで、背中を撫でる手が止まった。そっと見上げると、表情は思っていたよりも厳しいもので、妙な不安に襲われる。

 もしかして、婚約破棄とか――――?


「…………ハァァァ」


 エルネスト様の大きなため息に体がビクリと震えてしまった。

 そんな私を見て、エルネスト様が怖がらせるつもりはなかったと謝ってくれた。

 よかった。婚約破棄とかじゃないようだ。


「リリ、全てを奪っていいなら、今すぐにでも寝室に連れ去るよ? でも、それで得られるのは君の悲しむ顔だけだ」


 エルネスト様の真剣な表情に、さっきとは違う苦しさが胸を襲った。

 両頬を包まれ、鼻の頭にキスをされた。

 そして脳に届く『全てを奪う』という言葉。寝室に連れ去るということは…………つまり、私にそういった魅力を感じているということ? え? 本当に? エルネスト様が!?


「ちゃんとご両親に話を聞こう? それからでも遅くないはずだ」

「…………はい」

「うん。怖かったよね、ちゃんと話してくれてありがとう、リリ。私は、リリを心から愛しているんだよ。それだけは忘れないでいて」

「っ、ごめんなさい」


 エルネスト様に謝ると、困ったように笑って、違う言葉がほしいと言われた。


「愛してる、の返事は?」

「っ……! わわわわわわたっ、わたひも、愛してまひゅ」

「ふふっ。ん、ありがとう」

 

 甘い微笑みからの、頬へのキス。しかも唇に触れないギリギリの場所。脳みそが茹で上がるかと思った。

 エルネスト様は、これくらいで照れて本当に可愛い、と言いつつ私を強く抱きしめて、何度も何度も頬にキスをしてくれた。 

 結婚したら覚悟しておいてね、という言葉とともに。


 あれ? これ、もしかしてかなり愛されてない?

 奥手というより……ガッツリ我慢していた系?

 もしや、エルネスト様ってむっつりスケベ派なのっ?

 えっ――――!?




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ムッツリではなくガッツリの可能性がワクテカ(*´ω`*)
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