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【連載版】勘違い令嬢は、奥手な婚約者を押し倒した  作者: 笛路 @書籍・コミカライズ進行中


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20/20

最終話:押し倒した結果、幸せです




 何となく体調不良でモヤモヤしていたのがつわりだったらしく、妊娠が分かって一ヵ月経ったくらいから、何も食べられない状態がしばらく続いた。

 パンの匂いでオエオエ。果物の匂いでオエオエ。酷いときは水の匂いとかないはずなのに、口に含むとオエオエ。


「あ……トマトジュース飲めます!」


 時々当たりを引くと、胃にものを入れられたというだけで喜べる状態だった。ただそれはそこまで長い期間ではなく、五ヵ月目には随分と落ち着いてきた。

 その代わりなのか、お腹がぽっこりと日に日に膨らんできている。

 エルネスト様が嬉しそうに大きくなったなとお腹を擦ってくれると、何となく赤ちゃんがポコポコと動いている感触があります。


「もしかしたら、赤ちゃんもエルネスト様が大好きなのかもですね」

「っ、リリ、そういう煽りは止めてくれと何回言えば…………!」


 エルネスト様の琴線は相変わらず謎のまま。




 七ヵ月目になると、お腹が明らかにパーンと大きくなってきた。あまりにも膨れ続けるお腹を見て、痛くないのか重たくないのかと、エルネスト様が心配しまくってくれるので、不安などを感じる暇がなかった。

 そうして気付けばいつの間にか臨月になっていて、破水からの陣痛開始だった。


 陣痛と戦いながら一三時間にも及ぶ出産。

 子猫のような鳴き声をあげてこの世に生を受けたのは、女の子だった。

 室外で待機していたエルネスト様を呼び、娘を見せると、ボロボロと泣き出して何度もありがとうと言いながらキスをくれた。顔中に。


「んっもぉ! キスはいいですから抱っこしてあげてください」

「あぁっ……どうやって…………え、あ……こう?」


 侍女たちに赤ちゃんの抱き方を教えてもらいながら、エルネスト様が娘を抱き上げた。

 恐る恐るでへっぴり腰になっているし、涙はボロボロ流してるし、どう見ても騎士様には見えなくてちょっと笑ってしまった。

 

「小さい……。こんなにも小さいのに、重い」

「体重は平均かそれ以下のようでしたが?」

「命が……重いんだ。私たちの大切な新しい命」


 なるほど。

 新たに生まれてきた大切な存在の重さが身に染みているようだった。


「名前を決めなきゃな」


 エルネスト様がそう呟いたものの、名前はすぐに決まった。娘の顔をじっと見ていたエルネスト様が急に「グロリア」と呟いた。

 どうしたのかと聞いてみると、頭にそう浮かんできたらしい。


 グロリアは生まれた時はわりと皺くちゃなお猿さんだったものの、一週間、一ヵ月と経っていくと、徐々に顔立ちがはっきりとしてきた。

 どこがお互いに似ているかなども話したりした。

 髪色は私。瞳はエルネスト様。鼻はエルネスト様で、口元は私。


 エルネスト様はここ最近、出仕する直前になると行きたくないとか、グロリアを見ていたいとか言って、ちょっとゴネるようになった。ただ、そう言いつつも仕事はしっかり真面目にやっているようなので、そこは安心している。


「ただいま。グロリアは?」


 開口一番は、基本的にこれ。


「今はお義母様と遊んでいますわ」

「ずるい!」


 何がどうずるいのかは分からないけれど、エルネスト様も義両親も娘にメロメロだということは分かる。 

 エルネスト様は帰ると先ず入浴されるようになった。理由は、家に雑菌を持ち込まないためなのだとか。

 そして、お風呂から上がると素早く娘の下へ駆けつける。

 ちょっと慌ただしくも、平和に娘の寝顔を愛でる日々。何とも言えない幸せの日々だ。




 娘が生まれて一年が経った。

 グロリアはおぼつかない足取りながらも、しっかり歩き出している。お尻をふりふりと動かしながら歩く姿は、私たち夫婦も、義両親も、使用人たちも虜にしている。

 最近はわずかに言葉も出るようになった。


「ママー、んだぅ、ね? んーな!」

「ええ。お花、綺麗ね」

「きえい」

「そう、きれい」


 喃語からの移り変わりの時期で、教えるたびにちょっとずつ覚えて行っている。

 グロリアはわりと早い段階でママは覚えたけれど、なぜがパパが出てこない。エルネスト様はその件ではちょっといじけている。


 エルネスト様がお休みの日は、家族三人で庭でピクニックすることが定番と化している。

 庭の片隅にブランケットを敷き、そこでのんびりと過ごすのだが、エルネスト様は基本的にグロリアの後ろをついて回るか、私の膝枕でうとうとしているかだ。


 今日もそんな日で、庭を楽しそうに駆け回るグロリアを眺めつつのピクニック。

 膝枕で寝転がったエルネスト様の頭をそっと撫でていると、ガシリと手を掴まれた。何事かと思って下を向いたら、妙に色っぽい表情のエルネスト様がぽつりと呟いた。


「そろそろ、押し倒したくならないのか?」


 そういえばこのところ、子育てだなんだと追われていて、夫婦の時間が全く取れていなかった。

 あと、たぶんちょっと寝ぼけていたんだと思う。だって、色っぽいとろんとしたお顔から徐々にいつもの凛々しいお顔に変わってきたから。そして、耳を赤く染めているし。


「そうですね。今夜あたり、もしかしたら?」 


 余命半年だと勘違いして二年半くらい経ったろうか。あのときエルネスト様を押し倒したおかげで、今がある。

 なので、これからも積極的に押し倒していく所存だ。




 ―― fin ――




最後までお付き合いありがとうございました!!


ほんわかした二人よかったよ。いいぞもっと押し倒せ!とかとか、そんな感じで『評価』や『ブクマ』などしていただけますと、作者大喜びします!!ヽ(=´▽`=)ノ

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