初デートの日、現れたのは……
それ以来、謝るタイミングを逃し続け、秋田とは数か月ほど全く口を聞かなかった。
その間に先生から手紙が届いた。
手紙の内容は正に自分が書こうとしていたことだ。
『俺と付き合ってくれ。返事はいつでも構わない』
かくして、先生と生徒の秘密の関係は始まったのだった。
付き合い始めてから数週間が経った。
先生からデートをしようと誘ってきたのだ。
生徒や先生たちに見つからないよう、少し遠いところまで行きたいそうだ。
そのまま駆け落ちでもするのだろうかと胸を弾ませながら真宵はデートの日を心待ちにしていた。
そして待ちに待ったデートの日。
真宵は精一杯おめかしをして、待ち合わせ場所、噴水がある公園で待っている。
緊張しっ放しで、手の平に汗が滲んでいる。
「まだかな……」
公園の時計を見ると、待ち合わせ時間の十三時から三十分を超えていた。
中々来ないが、初デートなので待ち時間も楽しいものだ。
だがここは遅いと言うのが常識である。
「お待たせ」
「もう、遅いですよ……せん……」
声がしたので反射的に文句を言うが、目を凝らすとそこには先生でない人が立っていた。
「え? なん……で? 秋田さん……?」
「ほら、行こう」
「えっ、で、でも……! ええ……?」
強引に腕を引っ張られ、引きずられるようにして歩かされる。
「何でここがわかったんですか……?」
「おれの勘だよ、勘」
少々怒気を孕んだような声で秋田は言い放った。
恐らく調べたのだろう。
「秋田さん、どうしてこんなことするんですか」
「どうしてって……ッ」
痛みを堪えているような呻き声が聞こえた。
よく見ると、秋田は汗をかいていた。
「秋田さん!?」
支えようとした手をすり抜けるようにして、秋田は腹を押さえ、そのまま蹲ってしまう。
「どうしたんですか、秋田さん! しっかりしてください!」
「……ここに、来る……途中、車に……はねられて、ね……」
「車に!? どうして……」
「さあ……急いで、たから……げほっ」
秋田の口から真っ赤な花びらが飛び散った。
その光景に真宵は青ざめる。
「秋田さん! しっかりしてください! 秋田さん!」