愛に生き、愛に死す人生
「え……?」
「俺がお前を騙していたこと」
「……いえ、気付きませんでした。秋田さんは……気付いていたみたいですが」
「そうか……アイツは……秋田は俺を庇ったんだよ」
「……秋田さんが先生を?」
「ああ。俺を雇ったのはお前の父親だった。借金塗れの俺に金をいっぱいくれるって言うから加担した。お前を騙して父親の元に連れて行くつもりだった。だけどな、予定が狂っちまったんだ。まさか、俺が本当にお前のこと好きになるたあ、思わなんだ……」
「えっ?」
「嘘から出たまことってやつだ。それがお前の父親にばれて、殺されそうになったところを秋田が庇って、それで……。秋田がどこで俺と奴がいる場所を突き止めたかはわからんがな。庇ってくれたんだが、結局俺も病院送りにされちまった」
「秋田さんがしたことは、無駄だったってことですか……?」
「無駄じゃねぇ。それは秋田に失礼だろが。俺を守って……今もお前を守ろうとしている」
「……そんな……私、やっぱり行かないと……!」
「聞き分けがねぇのはいけねぇな。アイツのことを思うなら、アイツの気持ちを尊重しろ。アイツはお前を救ってくれる奴だ。……お前を救えるのは、俺じゃない」
とうとう秋田は帰ってこなかった。
父親も死体となって発見されたという。
意味を理解した真宵はその後、懺悔の旅に出た。
「……そんなことがあったのね」
「はい。……しょうもない話ですよね。すみません、長話に付き合わせてしまって」
「いいえ。そんなことないわ。それにわたくしが聞いたことだもの。とっても素敵だった」
「……そう、ですか」
「ええ。愛に生き、愛に死す人生を送った秋田さんという人は素敵だわ。そして、あなたが最初好きになったという先生。彼もあなたのために」
「はい。私は幸せだったんだなって、思います。二人の素敵な男性から愛されて」
「そうね。あなたはそれほど魅力的なのだわ」
「魅力とか、そんなの……私は正直、私のことを好いてくれていた二人の気持ちがよくわかりませんでした……最低な人間なのに」
「自分ではよくわからないものよ。自分を悪く言うのは止しなさい」
「はい……ありがとうございます」
「いいえ。こちらこそ、素敵な話を聞かせてくれて、ありがとう。ごめんなさいね、無理を言って。楽しかったわ。またいつか会いましょう」
真宵との話を終えると、修道女は真宵を帰した。
それからのち、修道女は愛こそ必要悪で正義なのだと死ぬまで説いたという。