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愛こそ必要悪で正義  作者: 社容尊悟
生徒と先生
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教会に集う迷える子羊たち


「教会に集う迷える子羊たちよ、今ここに汝らの罪を告げなさい」


 ここはとある教会。

 聖職者たちが罪人の懺悔を聞く場である。

 彼らの罪は、愛してはならない者を愛してしまったということらしい。

 聖職者たちは彼らに洗礼の儀を執り行った。

 これで彼らは穢れなき者となった。

「これで汝らは解放されました。主のお導きの下、感謝の讃美歌を」

 一同は合唱した。

 彼らは永遠の呪縛から解放され、涙を流した。


 愛してはならない者を愛し、そして愛する者を奈落の底に突き落としたことを嘆いている。

 ここに集う者は皆、同じ境遇に置かれていたのだ。

 讃美歌を歌いながら号泣している少女もその一人であろう。

 讃美歌を歌い終え、やがて一同は解散した。

 ここで会ったのも何かの縁、また会うかもしれないと誰かが呟いた。

 もう恋をすることはないと彼らは神の御前で誓ったのだ。

 修道女もそれを一時納得した。

 だが、彼らの決意は一瞬にして揺らぐことになる。

 先ほど洗礼の儀を執り行った修道女が、息せき切って走り寄ってきたからだ。


「いいえ! それは罪ではありません! それは間違いです! あなたがたのしてきたことは間違いではなかったのです……。ただ少し、はずれた道を選んだあなたがたを世間が受け入れてくれなかっただけなのです……。あなたがたが悔いる必要はありません」

 必死に言葉を紡ぐ修道女の姿に心打たれ、彼らは目線を下にやった。

「だから、あなたがたは世間とは違う道を進み続けてください! いつか認められる日が来るまで! 抵抗し続けてください! 微力ながら、わたくしはあなたがたを応援します」

 彼らは修道女の言葉に耳を貸した。

 真剣な目で修道女の言葉の行く先を見守っていた。

 震えた声が、苦悩に歪む表情が、彼女の本心からの言葉なのだと伝わったようだ。

 本当は神に仕える者として、私情を挟むことは許されることではない。

 彼女もそれをわかっている。

 だからこそ、こんな顔をするのだ。

 今にも泣きそうな顔を。

 すると、先ほど号泣していた少女が一歩進み出て、重々しい口を開いた。


「そう言ってくれるだけで十分です。私は……心が救われました。あの時からずっと、私は罪の意識でいっぱいだったから。今までずっと、辛くて悲しくて苦しかったんです」

 そう言って笑う少女もまた、悲しげな笑みを浮かべていた。

 少女の話は男性の教師を好きになったという話だったが、詳しい話は聞いていない。

 修道女は彼女の込められた意図を汲むことにした。

「……ねえ、あなた。宜しければ、その話聞かせてもらえないかしら」

 修道女は慈悲深い聖母のような微笑みを少女に向けた。

 急に親しげになった修道女に、少女は驚いたのか、「え?」と聞き返してきた。

「……知ったって、何の得にもならないですよ」

「聞かせてちょうだい」

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