シーツと私
お腹が減って起きる。ベッドから降りて限りある通り道を歩いていく。この部屋に、それ以外の道はない。
空腹を満たすため冷蔵庫を開ける。中には飲みかけた2lの水。いつ買ったか分からない焼き芋があった。私は匂いを嗅いでまだ食べられるか確認する。
「ギリ大丈夫」
ちょっと臭ったけどこのくらいなら大丈夫。ベッドに戻る。ちょっと前まではテーブルで食べられたけど。早くお母さん来ないかな。このままじゃ食べるところも食べるものも無くなってしまう。
焼き芋を食べ始めた。食べかすがいっぱいベッドに落ちる。最初こそ気にしたが今では何も気にしない。ただカップラーメンのスープをこぼした時は流石に慌てた。でも、今はそのシミも新しい柄として気に入っている。
「おい」
声がする。近い。どこから。もしかしてストーカー? この部屋に? 中々いい根性してるじゃない。私ならは例え好きな人の部屋だとしてもいたくない。見た目によっては付き合ってあげなくもない。
「おい、聞いているのか? おい!」
突如ベッドから落ちる。
「いた!」
ベッドを見るとシーツが立ち上がっている。え? 怖いんですけど? え? 何? 何か宿っちゃった系ですか? 私苦手なんですけど?
「おい! いつもいつも、わしを汚しあって。 もう我慢の限界じゃ!」
「え? すいません」
つい謝ってしまった。だけど信じられない。だってシーツがしゃべるんだもの。やっぱり何か宿っちゃった系か? お祓いって神社に行けばいいのかな? って私冷静すぎない。混乱しすぎて逆に冷静になるやつ?
「いいか小娘! よく聞け! わしはずっと見てきた。この部屋を。母が来なければ片付けることをしないお主を。汚れていくこの部屋を! いいか? 部屋はその人の心を表す。つまりお主の心は汚れている」
「はぁ? あんたねいきなり現れてなに? 私をそれでおどかしたつもり。例えいつも使っていたシーツが急にしゃべったくらいで驚くとでも? 大体私わねぇ歌手活動に忙しいの! 確かに掃除はしてないけど私の心は綺麗よ。この間だって……」
「ええい黙れ! お主の心を浄化する。これは決定事項だ。第一何が忙しいだ。歌手活動よりコンビニのバイトの時間の方が長いだろうが!つべこべ言わずにわしに従え! 」
「ひええ……」
「終わった。1日かけてようやく」
「よく頑張ったのう」
だってめっちゃ怖いんだもん。逃げようとしたら急に体動かなくなるし。従うしかないじゃん。でもなんだろうすごい達成感。
シーツがベッドに戻る。
「褒美じゃ。わしを使って存分になるが良い」
「お断りします」
私は倒れる様に床で眠った。……だってあのシーツで寝たくなかったんだもん。
腹が減って起きた。シーツがしゃべっていたのは夢だったのか。
私の部屋は汚かった。気がつくと私は掃除をしていた。掃除の仕方は覚えている。
綺麗になった部屋を見る。ふとアイデアが沸いた。この技術をブログで記事にしよう。題名は[シーツと私]。内容はある日自我を持ったシーツに掃除を教えられる女。これでいこう。