エピローグ
半年後、俺達は森岡の家に住んでいた。
「さすがに命を狙われないとは限りませんから、一か所に集まっていた方がいいでしょう」
というスズエの厚意からだ。
「髪の毛、戻ってきたね」
朝、俺がスズエの髪の毛を触ると「そうですね」とスズエは笑ってくれた。
「でも、白い髪も気に入っていたんですけどね」
「そうなの?」
意外だった。あまり気にはしていないようだったけど、気に入っているとは。
「だって、あの髪色は皆を守れた証でしょう?」
その言葉に、俺は目を丸くして、
「……ありがとう、スズエ。俺達を助け出してくれて」
彼女に、ようやく真正面からお礼を言えた。
命をかけてまで俺達を助けてくれてありがとう。俺達を見捨てないでいてくれてありがとう。
「スズエ、手伝ってくれる?」
「いいですよ、ユウヤさん」
恋人に呼ばれ、スズエはそっちに行ってしまった。丁度ご飯が出来たのだろう。
俺もそっちに行って、一緒に手伝う。
あぁ、この幸せが続けばいいなぁ。
あのゲームから一年後、ボクはスズエと出かけていた。
「ユウヤさん、あっちにクレープ屋さんがありますよ!」
「はいはい、すぐ行くから待ってて」
すっかり元気になった恋人に安堵する。一時期は死ぬかも、なんて言われていたから。
髪色も元の茶色に戻っている。明るい彼女はボクの心も温かくしてくれる。
ボクが追い付くと、スズエはギュッと腕に引っ付いた。
「どうしたの?」
「んー?甘えたいだけ」
最近はこうして甘えてくれる。それがうれしくてついつい甘やかせてしまうのだ。
「……ユウヤさん」
「なーに?」
「大好きです」
あぁ、曇りなく想いを伝えてくる彼女が愛おしい。
「ボクも、スズエが大好きだよ」
これからは、幸せにしてみせるからね。
だから……これからも、ボクのそばで笑ってて。
いつの間にかいなくなっていたフウ君が、「お父さん」と笑っている気がした。