くちなし
歪んだ世界に足を浸す
頭の頂まで浸かって視た景色
どどめ色のくちなしが空に咲く
堕ちた椿を鹿が踏む
虚ろな目をした鳴かないことり
泳ぎ方を忘れた魚はこと切れる
サルビアが魅せる幻
ハイビスカスの臆病な恋
見ざる 聞かざる 死人に口なし
紅いくちびる弧をえがく
欠けた月が空に咲く
水面の満月あざ笑う
あの世に繋がる水鏡
割れた鏡が映したこの世
破れたかけらを拾い集めて
手のひらの中には欠けた月
土に還れず 風にも舞えず
歪な月は空に昇るか
実際のクチナシは、白く綺麗な花を咲かせます。
どどめ色は、関東では桑の実の黒紫色を表すそうです。しかし、「どどめ色」という明確な定義はなく、人によってイメージする色が異なるという説もあります。
この詩では、打撲した青あざのような色をイメージしました。
また、サルビアは学校などにも植えられいるポピュラーな植物。ラテン語でサルビア、英語ではセージとされ、食用のハーブに使えるものもあります。
しかし、品種によっては幻覚作用があるものも。一般的に観葉植物として流通しているものには害はありません。
ダークな詩を書きたい気分だったので、黒く暗い部分ばかりを取り入れました。




