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イジメ、カッコ悪い

「ルートヴィヒ。今日の放課後は、もちろん私の剣術の稽古に付き合うんだろう?」


 あーもう、オフィーリアは黄金の瞳をキラキラ輝かせながら、一体何を言っているんだろうね。

 というか、そもそも僕は前世でも絶賛インドア派なんだよ? なのに脳筋ヒロインと二人っきりの稽古なんて、そんなのただの罰ゲーム……とも言い切れないのか?


 でも、残念ながら『醜いオークの逆襲』には好感度のパラメータはない(服従度と身体の部位ごとの快楽度のみ)ので、特に意味ないよね。


「ということで、悪いけど僕は遠慮するよ」

「『ということで』とはどういうことなんだ!?」


 ああもう、面倒くさいなあ……これじゃゆっくり昼食も摂れないよ。


「ルイ様、やはりこれからは、昼食は別の場所でお摂りになられたほうがよろしいかと」

「イルゼまで冷たくないか!?」


 澄ました表情で辛辣に言い放つイルゼに、オフィーリアが泣きそうな顔になる。

 これが“狂乱の姫騎士”の素顔だと知ったら、『醜いオークの逆襲』のユーザーはさぞがっかり……するどころか大歓喜だろうなあ。ポンコツ可愛いとか言って、もてはやしそう。


 くっ殺系姫騎士がポンコツなのは、むしろ鉄板だもんね。


「うふふ……でしたら今日は、私と二人きりで街にでも出かけませんか?」

「ひゃい!?」


 イルゼの反対隣に座る腹黒聖女が、耳元に吐息を吹きかけてきた!?

 耳は敏感なので、お手柔らかにお願いします。


 だけど……貧民街の一件以降、この腹黒聖女のボディタッチがやたらと多く感じるのは、気のせい……だよね?


「っ! ……ナタリア様、ここは大勢の生徒がいる食堂ですよ? 聖女らしく(・・・・・)、もう少し弁えられたほうがよろしいのではないでしょうか?」

「あらあ……だからこそ私は周りに配慮して、小さな声でお話ししただけですよ? ただ、そのせいでルートヴィヒさんが聞こえづらくなってしまうので、こうやって近づかないといけませんが」


 クスリ、と笑いながら、腹黒聖女がしなだれかかってきた!?

 いやいや、ちょっと待って!? 僕は“醜いオーク”なんだよ!?

 いくら痩せて少しは仲良くなったとしても、表面上だけは清楚が売りのビッチ聖女には世間体というものが……あ、いい匂いがする。


「そうですか……ナタリア様には、この際ですのではっきりとお立場をご理解いただいたほうがよろしいかと」

「うふふ、面白いですね」


 イルゼと腹黒聖女の瞳からハイライトが消え、仄暗(ほのぐら)い笑みを浮かべながらお互いにゆっくりと立ち上がる。

 僕? 間に挟まれて怖くてピクリとも動けませんし、どうせ挟まるなら百合の間にお願いしたいと思っておりますが何か?


 それより、さっきからモブ聖騎士に自分の主人をなんとかしろって目配せしているのに、なぜか僕に忌々しげな視線を送ってくるんだけど。


 仕方ない……ここは、唯一空気の読めるクラリスさんに……って、露骨に顔を逸らされた。

 どうやら僕は、彼女に見捨てられたらしい。


 その時。


「チッ、このチビのせいで、食事が不味くなる」

「そうね。本当に目障り」

「…………………………」


 後ろの席から聞こえる、舌打ちと罵詈雑言(ばりぞうごん)

 一瞬、僕が言われているのかなー、とも思ったけど、一応身長は百六十八センチあるから、チビじゃないよね?

 というか、オフィーリアとの一件以降、この僕に聞こえるようなところでの悪口はなくなったものの、陰ではメッチャ言われているらしいけど。


 まあ、聞いていて気持ちのいいものじゃないから、イルゼと腹黒聖女は空気と思うことにして振り返ってみると。


「うわー……」


 確かに僕よりも一回り以上小さい男子生徒が、周囲からあからさまに避けられている。

 しかも、他の生徒達が彼に向ける視線は、僕がいつも受けているものと同じだ。


 だけどまあ、僕には関係ないよね。

 むしろ僕への嫌な視線が減って、助かったよ。


 なのにさあ……。


「ねえ君、せっかくだから僕達と一緒に食べない?」

「「「「「っ!?」」」」」

「…………………………え?」


 あーもう。なんで僕、誘っているのかな?

 放っておいたほうが楽なのに、ねえ?


「あ……で、でも、ボク……」

「あははー……まあ、僕みたいな“醜いオーク”と一緒じゃ、君だって嫌かー……」


 困惑しながら目を伏せてしまった男子生徒に、僕は頭を掻きながら苦笑した。

 そうだよなー……最近はオフィーリア達が仲間になってくれたから、つい忘れてしまっていた。


 そもそも僕は、この世界の(・・・・・)嫌われ者(・・・・)だということを。


「ご、ごめんね? 別に僕は、君に迷惑をかけたかったわけじゃ……」

「っ! ち、違います! その……ボクなんかがルートヴィヒ殿下をはじめ、オフィーリア殿下や聖女様とご一緒するなんて、おこがましくて……」


 そう言うと、男子生徒は悲しそうにしながらうつむいてしまった。

 どうしよう……彼、メッチャ同志(・・)の香りがする。


「そ、そんなことないよ! 君さえよければ、是非一緒に食事しようよ! ねえ、みんな!」

「ん? 私はもちろん構わないぞ」

「うふふ、私もです」

「ルイ様のお言葉こそ全てです」


 モブ聖騎士のバティスタを除き、みんな了承してくれた。

 あはは……本当に、ありがたいなあ……。


「そういうことだから、早く移動しよう!」

「あ! ……その、ありがとうございます」


 僕は彼の席の(そば)に行って、テーブルにあるランチが乗ったトレイを持つ。


 男子生徒はうつむいて肩を震わせているけど、こういう時は何も言わないのがマナーだよね?

お読みいただき、ありがとうございました!


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【余命一年の公爵子息は、旅をしたい】
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