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絶対ろくでもないことだよね

「あれは……」


 屋上へと通じる入口に現れたのは、生徒会長のエレオノーラと、ソフィアだった。

 へえ……あの二人が一緒だなんて、ある意味お似合いじゃないか。


 ひょっとしたらあの舞踏会の時には、既に知り合い同士だったりするのかもしれないな。

 何といっても、エレオノーラの実家は帝国一の公爵家。ソフィアは言うまでもなく、ベルガ王国の姫君だからね。


「ルイ様……いかがなさいますか?」

「とりあえず、気づかれないように向こうの陰に隠れて様子を見よう」

「はい」


 僕達は昼食のパンなどを素早く片づけ、物陰に隠れた。

 できれば会話が聞き取れればいいんだけど、さすがにこの距離じゃ厳しいかな……。


「見る限り、仲良く会話……ってわけでもなさそうだね」

「革命についての相談のようですから、そういうわけにいかないのでしょう」

「イルゼ、二人の会話が聞こえるの?」

「いえ。唇の動きで、読み取っているんです」


 なるほど、読唇術か。

 ゲームでもイルゼは斥候だから、そういった諜報系のスキルを身に着けていてもおかしくはないもんね。


「イルゼは何でもできて、本当にすごいなあ……」

「そ、そんなことはありません……ですが、ありがとうございます」


 僕の呟きを拾ったイルゼが口元を緩めるけど、その視線はあの二人を捉えて離さない。


 そして。


「……終わりましたね」

「うん……」


 エレオノーラとソフィアは握手を交わした後、にこやかな笑顔を浮かべながら屋上から去っていった。


「それで……あの二人はどんな会話をしていたの?」

「どうやらエレオノーラ会長は、ソフィアから活動のための資金提供を受けているようです。今回は、これまでの簡単な活動報告と、人員の受け入れについてのようです」

「人員の受け入れ?」

「はい……ベルガ王国からの人員を、この帝国内に手引きするための」


 おいおい……それって、普通にスパイ活動じゃないか。

 それを帝国の公爵令嬢がしていたとなったら、見つかれば彼女一人が極刑になるだけじゃ済まないんだけど。


「いかがなさいますか?」

「……さすがにこれは見過ごせないけど、かといって妙案が思い浮かばないね……」


 ベルガ王国の人間が密入国した現場を押さえてしまうのが、手っ取り早いとは思うんだけど……。


「ねえイルゼ、その人員の受け入れについて、いつ、どこで行うかとか、そういったことは話をしていた?」

「いえ……ただ、『いつもどおり』、と」


 イルゼは少し残念な表情で、かぶりを振った。

 ハア……ということは、以前から隣国のスパイを手引きしてたってことじゃん。


 正直、本編開始までにまだ四年もあるからって、僕も甘く見ていたかもしれない。

 つまり、ゲームの攻略どおり四年後にエレオノーラを捕らえ、調教して服従させる方法以外で革命を阻止しようと思ったら、今の内から潰しておかないと手遅れになるってことだ。


「……これから、特に注意しないと、だね」

「はい……」


 僕とイルゼは、あの二人が去った後の屋上の扉を眺めていた。


 ◇


「んふふー、今日も大勢来てくれて嬉しいですねー」


 放課後になり、六人で情報ギルドである食堂へ押しかけると、お姉さんが笑顔で前回と同じ席に案内してくれた。

 だけど、今日はありがたいことに他にお客さんはいないみたいだ。


「それで、ご注文はいかがなさいますかー?」

「もちろん、『季節のフルーツのフラペチーノ』をトールで。それと……この四人も(・・・・)仲間です(・・・・)

「……そうですかー」


 お姉さんは笑顔を絶やさないまま頷くと、カウンターの奥へと入っていった。

 まあ、モブ聖騎士も仲間なのかと言われると、多分……いや、絶対違うけど。


 アイツ、あくまで聖女にしかなびかないからな。

 この前も、オフィーリアが『手合わせをしよう』って誘っても、一切無視してたし。


 僕達はしばらく談笑していると。


「今日は店じまいですー」


 お姉さんが入口に『閉店』の看板を掲げ、鍵を閉めた。


「んふふ……早速だけど、これが依頼結果よ」


 間延びした口調から一転、お姉さんは妖艶な微笑を浮かべながら、テーブルの上に羊皮紙の束を置いた。

 それを手に取り、僕は隣に座るイルゼと一緒にしげしげと読むと。


「これは……っ!」

「はい……!」


 エレオノーラに関する内容が、恐ろしいほど網羅して記載されていた。

 出自、家族構成、経歴、交友関係……その内容は、枚挙にいとまがない。


「どう? これで足りているかしら?」

「そ、そうですね……」


 腕組みをしてその巨大なお胸様を持ち上げながら、ずい、と顔を近づけるお姉さん。

 胸が強調されまくり、いつも以上に谷間の主張が激しいです……って!?


「あいたっ!?」

「……どうなさいましたか?」


 ジト目で睨みながら、そんなことを尋ねるイルゼ。

 くそう、今思いっきり僕の足を踏んだくせに。でも、ゴメンナサイ。


 羊皮紙を一枚ずつめくり、素早く流し読みしていくと。


「イルゼ……」

「ありましたね……」


 エレオノーラがこの一週間で接触した人物が、しっかりとリストアップされていた。

 昼休みの屋上で二人の会話を読み取った、ベルガ王国のスパイと思われる連中。


 そして……僕が最も知りたかった人物。


 帝都の貧民街に住む一人の若者、“ブルーノ”の情報も。

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【余命一年の公爵子息は、旅をしたい】
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