脳筋ヒロインと腹黒聖女が邪魔してくるー
情報ギルドを訪ねてから、今日で三日目。
午後の授業を受けながら、僕は放課後になるのを今か今かと待ち構えている。
もちろん、保留となっていた、エレオノーラの身辺調査の依頼を受けてもらえるかどうかの結果を確認するために、その情報ギルドへ行く予定だ。
とはいえ。
「イルゼ、楽しみだね」
「はい……」
どちらかというと、情報ギルドではなくフラペチーノが目的みたいになっちゃっているけど。
いや、あのフラペチーノが美味しいこともさることながら、あれにかこつけてイルゼとデートごっこが楽しめるっていう、喪男にとってこんな夢みたいなイベントが用意されているんだから。
もし現世に戻ることが可能なら、『醜いオークの逆襲』を作った同人サークルのブログに、このデートイベを実装するように要望コメントを出したいくらいだよ。
……実装されても野外で露出調教イベントとか、そっち方向になることは目に見えているけど。
「それでは、今日の授業はここまでとします」
担任のナウマン先生の言葉を受け、生徒達が一斉に帰り支度を始める。
といっても、全員寄宿舎生活だから、帰宅先はこの帝立学院内なんだけどね。
「ルイ様、このまま向かいますか?」
「そうだね。向こうも僕達の素性を知っているわけだし、別に制服姿でも構わないと思うよ」
それに、制服を着ていたほうが、学校帰りのデートシチュっぽくて楽しい……というより、前世ではできなかったことを、こっちの世界で楽しんでみたいっていうのもあるんだけど。
なのに。
「ルートヴィヒ殿下! 今日こそは私に付き合ってもらうぞ!」
「うふふ……何だか楽しそうですね」
……今日もオフィーリアが絡んできたよ。しかも、腹黒聖女のオマケ付きで。
「ぼ、僕達は用事があるのでこれで。イルゼ、行こう」
「はい」
邪魔をされてたまるかとばかりに、その場から逃げ出そうとする……んだけど。
「まあまあ。そんなに私達を避けなくてもいいじゃないか」
「そうですよ。むしろ、ルートヴィヒ殿下が皇帝になられた時のことを考えれば、学生のうちにブリント連合王国の第四王女と、このミネルヴァ聖教会の聖女と誼を結んでおいても損はないと思いますよ?」
「うぐう……」
オフィーリアが僕の身体を片手でヒョイ、と持ち上げ、一歩も進ませようとしてくれない。
いや、僕って体重が二百キロもあるのに、よくこんなことができるな。脳筋ヒロインめ。
腹黒聖女も腹黒聖女で、こうやって理詰めで責めてくるし……バッドエンドを回避したい僕の心を、的確に突いてくるじゃないか。
「なら、こうしようではないか。私達も貴殿達の用件に同行し、それが終わったら今度は私達に付き合うということでどうだ?」
「ハアアアア!? ぼ、僕達についてくる気ですか!?」
「……ルートヴィヒ殿下は、そんなに私達のことが嫌いなのか?」
普段は清々しいほどイケメンぶりを発揮するオフィーリアが一転、しょぼん、と肩を落とす。
ああもう……これじゃ僕が悪者みたいじゃないか……。
「……協力する気が一切ないじゃないですか(ボソッ)」
う、後ろからイルゼの怨嗟に似た呟きのようなものが聞こえた気がするけど、ここは無視するのが得策だな……。
「うふふ、大丈夫ですよ。私達は別にお二人の邪魔をするつもりはありませんから」
いや、ついてくる時点で邪魔以外の何者でもないんですが。
だけど……ハア、仕方ない。
「いいですか? 絶対に邪魔しないでくださいね? それと、余計なことを聞いたりしないこと」
「うむ! 承知した!」
「ええ、もちろんですとも」
落ち込んでいたオフィーリアは、打って変わってパアア、と満面の笑みを浮かべ、腹黒聖女はしてやったりとばかりに口の端を持ち上げた。
で、この二人がついてくるってことは、従者であるクラリスさんとバティスタの上位モブユニットコンビも一緒なわけで。
情報ギルドなのに、大勢で押しかけていいものなんだろうか。
いや、気にしたら負けだな。
そんなことより。
「そ、その……イルゼ、ごめんね?」
「……仕方、ありません」
イルゼは仕方ないとばかりに了承こそしてくれたものの、かなり気を落としているのが分かる。
僕だって今日を楽しみにしていたから、すごく落ち込んでいるとも。
だから。
「あ……」
「そ、その……今日は駄目だったけど、明日でも明後日でも、すぐにやり直しをしようよ」
オフィーリア達に気づかれないように、イルゼの手をそっと握りながらそう耳打ちをした
イルゼも、了承とばかりに僕の手をキュ、と握り返し、口元を緩めながら頷いてくれた。
お読みいただき、ありがとうございました!
少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、
『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!
評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!




