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案の定、僕への嫌がらせでした

「黙れえええええええええええええッッッ!」

「「「「「っ!?」」」」」


 そんな観客の声をいとも簡単に掻き消してしまうほどのオフィーリアの絶叫が、訓練場にこだました。


「貴様等、この私とルートヴィヒ殿下の正々堂々(・・・・)の勝負を愚弄するのかッッッ!」


 ……驚いたな。

 僕はオフィーリアから、多少なりともクレームを受けると思っていた。

 あれは言葉のあや(・・・・・)だと言われても、おかしくないものだし。


 もちろん、そんなことを言い出したら全力で『二対一でOKだと言った』とアピールして、無理やり認めさせるつもりではいたけど。


「で、ですがオフィーリア殿下、あんなものは無効ですし、そもそも二対一なんて卑怯……」

「まだ言うか! 私は最初から二対一での戦いを認めていた! そして、ルートヴィヒ殿下はルールに則って戦い、勝利したのだ! 私達の戦いに、貴様等が口を挟む余地などない!」

「「「「「…………………………」」」」」


 鬼の形相のオフィーリアに睨まれ、観客達は全員押し黙ってしまった。

 あはは……この性格、ゲームと一緒だな。


 誰よりも武を重んじ、真っ直ぐで、純粋で、高潔な、最高の攻撃力を誇るヒロイン。

 オフィーリア=オブ=ブリント、その女性(ひと)だ。


「フン。あの連中のせいで、せっかくの貴殿達との戦いが台無しになってしまった。だが……ルートヴィヒ殿下、イルゼ、見事だったぞ」


 そう言うと、オフィーリアは凛々しさを(たた)えた微笑みを見せた。

 うわあ、なにこのイケメン。僕よりも圧倒的にイケメンが過ぎる。


「イルゼ……私はお主に、最低のことを言ってしまった。どうか、許してはくれないだろうか」

「……お気になさらずとも結構です」


 深々と頭を下げるオフィーリアに、イルゼは表情も変えず、抑揚のない声で返した。

 い、一応、謝罪は受け入れということでいいのかな……いいんだよね?


「ルートヴィヒ殿下」

「え!? あ、は、はい!」


 突然声をかけられ、僕は思わず挙動不審になってしまった。


「フフ……この私の全身全霊の一撃をそのように全て受け止められては、二対一でなくとも私は負けていただろうな……」

「い、いえ、そのようなことは……」

「謙遜しないでいただきたい。そして……私の剣を受け止めた貴殿の言葉こそが真実であると、この私は(・・・・)信じよう。だが、ここにいる他の者達は、そうは思ってはおらん」

「…………………………」


 ……まあ、それに関しては今さらだけどね。

 大体、最初から“醜いオーク”の言葉が本当か嘘かなんて関係なく、ただ気に入らない(・・・・・・)だけなんだから。


「そこで、だ。この際なので、真偽のほどを誰の目や耳にも分かるようにしようじゃないか。“クラリス”」

「はっ!」


 観客のほうへ向けて声をかけると、腰に剣を携えた一人の女子生徒が男子の首根っこを捕まえて現れた。

 あの女の子……ひょっとしてオフィーリアの従者かな?


 だとすると、剣のデザインからしてブリント連合王国限定の上位ユニット、『親衛隊』だろうなあ。


 でもってあの男のほうは、ソフィアの従者だよな。

 うん、こうなってくると大体話が見えたぞ。


「あうっ!?」

「さて、トーマス……昨日、貴様はこの私が昼食中に確かに言ったな? 『舞踏会のあった日の夜、その件で物申しに行ったソフィア殿下をルートヴィヒ殿下が(はずかし)め、(けが)そうとした』と」


 クラリスという女子生徒に地面に組み伏せられるトーマスを、その前に立つオフィーリアは見下ろしながら問い(ただ)す。


「どうなのだ? 早く答えろ」

「そ、それは、その……」


 黄金の瞳に睨まれ、(おのの)いた表情のトーマスが顔を逸らした。

 この反応だけで、コイツが嘘を吹き込んだんだとはっきり分かる。


「つまり、あろうことかこの私に嘘を吐いた……そういうことでいいのだな?」

「い、いや、嘘というわけでは……」

「ルートヴィヒ殿下、この男の話ではソフィア殿下を襲おうとした貴殿を止めたとのことだが」


 僕のほうを見やりながら、オフィーリアが口の端を持ち上げた。


「まさか。僕はこの男がソフィア王女の従者だということも、オフィーリア殿下からお聞きしたあの日に初めて知ったんです。絶対にあり得ません」

「だそうだが?」

「うう……」


 威圧感が半端ないオフィーリアの低い声に、トーマスはうめく。

 さすがにこれは他国からの留学生とはいえ、王族を騙し、皇族を(おとし)めたとして処刑されてもおかしくはない。


 僕だって、この男のせいでイルゼが(ののし)られ、(はずかし)められたんだ。絶対に許すつもりはない。

 二度と、こんなことが起こらないようにしないと。


「で、まんまとこの男に踊らされた気分はどうだ?」

「「「「「…………………………」」」」」


 観客を見回しながら、オフィーリアは無言の圧力をかける。

 さすがにバツが悪いのか、観客達は一様に視線を逸らし、顔を伏せた。


「オフィーリア殿下。この者は、先程の戦いが終わった後も観客を焚きつけるために、(あお)っておりました」

「ハア……やれやれ、最低だな」


 クラリス……さんの報告を受け、オフィーリアは額を押さえながらかぶりを振った。


 すると。


「お待ちください」


 観客の中から、トーマスの主人……ソフィアが現れた。

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【余命一年の公爵子息は、旅をしたい】
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