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狂乱の姫騎士の合流

「えーと……一か月ぶりってところかな」


 ゲートで転移してボルゴニア王国へとやって来た僕は、そんなことを呟いてみる。

 とはいえ、ボルゴニアのゲートがある場所は王宮内の一室のため、特にボルゴニアらしさを感じるようなところはないんだけど……って。


「ディ、ディニス陛下!?」

「うむ……ルートヴィヒ殿下、よくぞまいられた」


 なんと、ディニス国王が出迎えてくれているんだけど!?


「うふふ……ラティア神聖王国に戻ることを伝えるついでに、ボルゴニアにも伝達しておいたんです」

「あ、そ、そう……」


 僕としては心臓に悪いので、できればこっそりとしてほしかったんだけどなあ……。


 その時。


 ――バシン!


「あいたっ!?」


 いきなり叩かれ、僕は頭を押さえながら振り返ると…………………………あ。


「オ、オフィーリア!?」

「……私がいない間に、随分と楽しそうなことをしているじゃないか」


 そこには、腕組みをしながら仁王立ちをしているオフィーリアと、申し訳なさそうに苦笑いをしているクラリスさんがいた。

 だ、だけど、どうしてここに!?


「うふふ。オフィーリアさんにも、私から連絡しておいたんです。イスタニアの対応には、ブリント連合王国の参加は絶対に欠かせませんから」

「な、なるほど……」


 だけど、聖女の言うとおりイスタニアについて協議するなら、ブリント連合王国は絶対に加えないといけない。

 西方諸国でもバルドベルク帝国と並ぶ列強国でもあるし、何より、現在中央海(メディテラ)を含め海の覇権を握っているのは、ブリント連合王国に他ならないのだから。


「全く……私が君の傍にいれば、毒などという姑息な真似をした者など、剣の錆にしてやったものの」

「っ!? オ、オフィーリア!」

「む? 何だ?」


 溜息を吐きながら不用意に放つオフィーリアの口を慌てて塞ごうとするけど、当の本人はキョトン、としている。

 ああもう……ここには僕が毒を飲んだせいで心を痛めているイルゼとジル先輩もいるっていうのに、どうして彼女はこう空気を読まない脳筋なんだろうか……。


「……ルイ様、私のことはお気遣いなさらず」

「そうだよ。ルー君が気にすることじゃないから」


 イルゼとジル先輩が、ニコリ、と微笑む。

 いや、二人は気にしないと言っても、僕が気にするんだよ……って!?


「ひはひ!?」

「ルートヴィヒ、君は勘違いしているぞ。既に起きてしまったことを、いちいち蓋をすることが優しさではない。そんな失態すらも笑い話にする度量の大きさこそ、君が見せるべきものだ」


 僕の両頬をつまみながら、オフィーリアは微笑みながら諭す。

 ああもう……こうやって無駄にイケメンなところ、本当に困るんだけど。何なら弟子入りしたいくらいだよ。


「そういうことだ。まあ、我が友なら既に気にしていないだろうがな」

「ま、まあね……」


 両頬がようやく解放され、僕はジト目でオフィーリアを睨みながら負け惜しみのように返事をした。


「うふふ。さあ、今度こそまいりましょう。ラティア神聖王国……ミネルヴァ聖教会へ」

「「「「「おー!」」」」」


 僕達は、オフィーリアとクラリスさん、それにディニス国王を加え、“ゲート”をくぐってラティア神聖王国へと転移した。


 ◇


「まあまあ、よく来てくれたわね」


 ラティア神聖王国に到着後、馬車に乗ってミネルヴァ聖教会本部を訪れた僕達を、教皇が部下一同と一緒に笑顔で出迎えてくれた。

 というか、あの(・・)ロレンツォを見ているからか、教皇の後ろに控えている枢機卿(すうききょう)クラスの偉い人達が、すごく人の好さそうなお爺さんにしかない。

 実際、僕達をまるで孫を見るかのようにニコニコしているし。


「どうぞこちらへ」


 ということで、教皇のあとに続いて本部であるクインクアトリア大聖堂の中へと入ると、僕達はとても豪奢な部屋へと通された。


 そこには。


「ん……?」

「ほう……」


 既に何人かの偉そうな人達が、着席していた。

 どうやら、僕達と同様イスタニアについての対応を協議するために呼ばれた、西方諸国の面々のようだ。


「ルイ様……」

「うん。まさか、ここまで大事になっているとは思わなかったよ」


 心配そうに耳打ちするイルゼに、僕は頷く。

 それにしても聖女め、ここまで大規模にするんだったら、最初に言ってくれてもよかったのに。


 僕達は指定された席に座り、しばらく歓談した。

 といっても、先に来ていた諸国の面々とは軽く会釈するのみで、もっぱらイルゼ達とだけど。


 そして。


「皆様……お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます」


 テーブルの中央の席にいる教皇が立ち上がり、深々とお辞儀した。


「本日お集まりいただいたのは、他でもありません。ナタリア」

「はい」


 教皇に促され、隣に座る聖女が立ち上がる。

 それに合わせて、後ろに控えていた神官達から書類の束が席に配られた。


 これは……イスタニアの調査報告書、か。


「聖女、ナタリア=シルベストリです。今般、イスタニア魔導王国の海軍が、ガベロット海洋王国の領海を侵犯しました」


 僕達を除く西方諸国の面々から、軽いどよめきが起こる。


「それだけではありません。教会の調査により、イスタニアは『魔導兵器』なるものを開発し、現在も続いているダルタニア王国とスレイム王国の戦争において実戦投入されたことを確認しております」

「む、むう……」

「それが事実なら、由々しき事態ですぞ……」


 他の国々も、事の重大さを認識しているようで、書類を眺めながら唸り声を上げている。


「そこで、ミネルヴァ聖教会としては西方諸国の平和を脅かすイスタニアの暴挙を止めるため、次のことを提案します」


 聖女から言葉を引き継いだ教皇が、全員を見回して、すう、と息を吸うと。


(しゅ)ミネルヴァの名のもとに、西方諸国による連合軍の結成及びイスタニア包囲網を形成します」

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