今度はミネルヴァ聖教会へ
「それでは、お世話になりました」
帰りのゲートの前で、見送りに来てくれたジル先輩とフランチェスコ国王、マッシモ王子にお辞儀をした。
「う、ううん! こちらこそ、迷惑ばかりかけてごめんね?」
「あはは。もう終わったことなんですし、いいじゃないですか」
申し訳なさそうにするジル先輩に、僕はおどけながら笑ってみせた。
ジル先輩からの告白を断ったことへの、負い目を隠すかのように。
「あ、そうだ。イルゼちゃん、ちょっと……」
「はい」
イルゼが、手招きするジル先輩に連れられて二人でコソコソ話をしている……というか、嫌な予感しかしないんだけど。
「っ!?」
「ね? 悪くないと思うんだけど……」
……あの二人、何の話をしているんだろう。
「うふふ……ジルベルタ先輩、どこか吹っ切れたように見えますね」
「っ!? ナタリアさん!?」
いつの間にか僕の背後についた聖女が、耳に息を吹きかけながらささやいた。
そういうの、本当にやめてもらえないですかね? ぞわぞわするんですけど。
「ところで……実はルートヴィヒさんに提案があるのですが」
「提案、ですか……?」
打って変わって真剣な表情を見せる聖女に、僕も姿勢を正した。
「帝国にお帰りになられる前に、例のイスタニアの件について今後を含めて教皇猊下を交えてお話をしたいと思いまして」
なるほど……元々ミネルヴァ聖教会は、イスタニア魔導王国の『魔導兵器』をずっと警戒していた。
なら、今回の件を含め、教会には色々な情報が集まっているかもしれないし、お互いに情報共有するにはちょうどいい。
それに、イスタニアの全容についてできる限り把握した上でオットー皇帝に話をしたほうが、より動きやすいだろうからね。
「分かりました。僕からも是非、教皇猊下とお話しをさせてください」
「うふふ、ルートヴィヒさんならそうおっしゃっていただけると思っていました」
聖女が、パアア、と笑顔を見せた。
この反応を見る限り、ひょっとしたら僕が断ることも想定していたっぽいな。それが二つ返事で受け入れたから、嬉しかったのかもしれない。ちょっと可愛くない? メインヒロインの一人だから当たり前だけど。
「ルイ様、失礼いたしました」
「ルー君お待たせ!」
ちょうど聖女と話が終わったところで、イルゼとジル先輩が戻ってきた。
満足そうな表情を浮かべているジル先輩を見て、僕としては二人の会話の内容がメッチャ気になります。
「イルゼ、どんな話をしていたのか、教えてくれない?」
「申し訳ございません。こればかりは、ルイ様にもお話しするわけには……」
言葉どおり申し訳なさそうに深々とお辞儀をするイルゼ。
余計に気になるけど、さらに追及して嫌われるのも嫌だし……ぐ、ぐぬぬ……。
「では、帝国に帰り……」
「あ、そのことだけど、その前にミネルヴァ聖教会の本部に行くことになったから」
「そうなのですか……?」
イルゼは、僕の後ろにいる聖女を見やる。
その表情は、どこか不服そうだ。
「はい。イルゼさんも、ルートヴィヒさんを狙ったあの国のことが気になるでしょう?」
「……そういうことであれば」
イルゼは恭しく一礼する。
やっぱり、イスタニアについて気になるよね。
「となると……ゲートを繋げる先を帝国からボルゴニアに変更しないと」
「え? ルー君、ボルゴニアに行くの?」
あ、ジル先輩には話してなかった。
ということで、僕は聖女との話を説明すると。
「むう……だったら、ボクもルー君達と一緒に行くよ!」
「え!? ジル先輩もですか!?」
ええー……どうしよう。告白断ったから、メッチャ気まずいのに……。
僕は『それってどうなんですか?』という思いを込めて、フランチェスコ国王を見ると。
「うむ、そうしたほうがよいだろう。我等ガベロットに対し、イスタニアが牙を剝いたのだ。なら、それがいかに愚かであるかを分からせる意味でも、な」
「おう! んなもん、イスタニアの野郎どもには血で償わせるに決まってんだろうが!」
「もちろん、“ガベロット式”でね!」
はい、ここでも“ガベロット式”が出てきました。
メッチャ気になりますけど、絶対にろくなものじゃないと思うので、僕はあえて触れませんけどね。
「あ、あははー……まあいいか。それじゃ、ボルゴニア経由でラティア神聖王国に……ミネルヴァ聖教会に向かおう」
「「「おー!」」」
「……おー」
僕達はゲートの上に乗り、フランチェスコ国王とマッシモ王子に見送られながら、ボルゴニアへと転移した。
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