親友の死
えりは女学校卒業後出版社でタイピストとして働いていましたが今は1人で探偵事務所を経営しています。
男装は女性が1人でやってるなると取れる依頼が限られてしまいますが、男でいると何かと便利だからです。
「依頼って何の依頼よ?」
「あれ」
えりは桜の木を指しました。木の周りは人だかりでいっぱいです。
「待って。ゆきちゃん」
行こうとするゆきをえりが引き留めます。
「君は見ない方がいい。」
「どうして?」
えりが止めるのも聞かずゆきは人混みをかき分け桜の木の方に進んでいきました。
「嘘でしょ?!彩花さん?!」
ゆきが目撃したのは親友の変わり果てた姿でした。
「彩花さん!!」
ゆきはその場に崩れ落ち泣き叫びます。
「ゆきさん」
気がつくとゆきは中庭の桜の木の下にいました。隣には親友の姿もあります。
「彩花さん。」
彩花は髪に桜の枝を刺しています。花の咲いた枝を簪のように。
「彩花さん、その桜の花」
「ええ、みやこ先生がさして下さったの。」
「良かったわね。彩花さん。」
「彩花さん!!」
ゆきは目を覚まします。
「夢だったの?」
ゆきは気がつくと保健室のベッドで眠っていました。
「ゆきちゃん、大丈夫か?」
傍らにはえりがいました。
桜の木の下で彩花の遺体の前で泣き叫び気を失ったゆきを保健室まで連れてきてくれたのです。
彩花は髪に桜の花が咲いた枝を簪のように刺しナイフを胸に刺され死んでいたのです。
「ゆきちゃん、警察によると死亡推定時刻は16:30だ。さっそくで悪いが何か心あたりはあるか?」
(桜の木の下で待ち合わせ。簪には枝の簪。)
「ねえ、えりちゃん。あの桜の木の下の言い伝え知ってる?」
「あれだろう。確か桜の木の枝互いの髪に翳し合ってなんちゃらとかいう、」
「そう、それ。私犯人分かったかもしれない。」
ゆきはベッドから起き上がると保健室を出ました。
「待ってくれ。ゆきちゃん、どこ行くんだ?」
その後を追うえり。
「どこって犯人のところよ。」
「犯人?誰なんだ?」
「一緒に来て。着いてくれば分かるわ。」
ゆきが向かったのは音楽室です。授業中なのか生徒達の歌声が聞こえてきます。
「本当に犯人がいるのか?授業中みたいだぞ。」
ゆきは勢いよく扉を開けると中に入っていきます。
「先生貴女でしょ?彩花さん殺したの!!」
音楽室に入るなりピアノの椅子に座っているみやこに掴みかかる。
その様子にざわつく下級生達。
「ゆきちゃん、落ち着いて。」
えりがゆきをみやこから引き離します。
「先生、授業終わってからでもかまいません。お時間とれますか?」