文学少女と男装の探偵
公式企画投稿作品です。
「ねえねえ、ご存知?」
「何がですの?」
「あの桜の木。」
「桜の木って校舎から見えるあの桜の木?」
「ええそうよ。あの桜の木には伝説があるの。桜の木の枝を1本取って互いの髪に翳し合うの。そしたら2人は特別な絆で永遠に結ばれるんですって。」
「まあ、永遠にというのはどちらかが殿方に嫁がれても?」
「ええ、そうよ。」
この女学校にはそんな噂がありました。桜の木の小枝を髪に翳すと簪のようにみえるので乙女達は「桜の簪の誓い」と言っておりました。
そこで美しいお姉様は可愛い妹にお手数を書きました。桜の木の下で待っていると。
「冒頭はこんな感じかしら?」
校舎の裏庭に一際華やかに咲く桜の木の下で自作の小説に目を通す乙女が1人。
ここは桜咲女学校。この桜の木は何年にも渡り乙女達を見守っているのです。
乙女はの名前はゆき。彼女は小説家志望の女学校5年生。17才。自身の女学校に咲く桜の木の言い伝えを元に自作の小説を執筆しているのです。
「ゆきさん」
声をかけてきたのは同じ級の彩花さんでした。
「ゆきさん、こちらにいたのね。教室の窓から姿が見えたから。」
「ええ、この桜の木を題材にしているから。ここのが書きやすいの。」
「少女雑誌に送る予定の?」
「ええ。」
ゆきの夢は小説家。自作の少女小説を書いて少女雑誌社に持ち込んでいるのです。しかしなかなか採用してもらえないのです。
「大丈夫よ。ゆきさんの小説私好きよ。」
「ありがとう彩花さん。」
「私、そろそろ帰らなきゃ。彩花さんは?」
ゆきが立ち上がる。
「私はこれからみやこ先生と待ち合わせなの。」
みやこ先生とは桜咲女学校の音楽教師。2年前にイタリア留学を終え母校に教師として戻ってききました。
洋装が特徴の美女です。
「彩花ちゃん。待たせたわね。」
ちょうどそこにみやこがやってきました。
(みやこ先生とこの場所で待ち合わせ?ってことは)
ゆきにある考えが過りました。
「彩花さん。もしかして」
「ええ。」
「良かったわね。」
それだけ言うとゆきは去っていきました。
翌日ゆきが登校すると桜の木の回りには人の群ができていました。
(何かしら?)
ゆきは気になって傍によろうとします。
「ゆきちゃん」
ゆきは誰かに引き留められる。
振り向くとそこには男物のスーツにトレンチコートを羽織った人物がいました。
「えりちゃん?」
えりそれが彼女の名です。男みたいな姿だがれっきとした女性なのです。
ゆきの15才年上で従姉妹同士。えりもこの女学校の卒業生なのです。
「なんでいるのよ?」
「なんでって学校から依頼を受けて来たんだ。」