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坂道
あの日、登った坂道
もう君と登ることはない坂道
赤く染まった空の色が
いつまでも瞼の裏に残る
潮風を受けながら
君を背負って歩いた坂道
海に沈む夕焼けが
空を赤紫に染め
一際明るい星が一つ
紺色の空に輝き始める
さざ波の音が遠く
繰り返し聞こえてくる
少し立ち止まると
目を閉じて
揺れる波音を
受け止める
「大丈夫?」
と呟く君に
「平気だよ」
と一言返す
心配そうに
顔を覗き込もうとする君の吐息が
耳をなでてくすぐったい
空を照らす光より
遥かに優しく温かで
夜を照らす光より
煌めいていて輝いている
背中に感じる確かな光を
伝わってくるその温もりを
離さぬように
優しく包んだ
最後までお読みいただきありがとうございます