行方不明
家の近所に心霊スポットがありました。
心霊スポットと言っても何かが出たと聞いたことはなかったし、子供達にとってはちょっとした秘密基地のような廃墟でした。
大人たちは危ないから近寄ったらいけないとは言っていましたが、子供達はナイショでコッソリ遊んでいました。
そんなある日のことです。
「今日何する?」
「コメイラズしようよ」
「それは昨日やったから別のやろ」
「軍戦艦は?」
「ごめん。ボール無くした」
「えー。じゃあ……ジッチクは?」
「いいよ!」
「やろやろ」
いつも通り私達は廃墟で遊んでいました。
「次何する?」
「かくれんぼしよう」
「いいね!」
「やろやろ」
いろいろ遊んでしばらくして、かくれんぼすることになったんです。
「いーち、にーい、さーん、しーい、ごーお、ろーく、なーな、はーち、きゅーう、じゅーう。もぉーいぃーかぁーい」
「もぉーいぃーよぉー」
「「まぁーだだよぉー」」
「いーち、にーい、さーん、しーい、ごーお、ろーく、なーな、はーち、きゅーう、じゅーう。もぉーいぃーかぁーい」
「「「もぉーいぃーよぉー」」」
「よっしゃぁ! かくれんぼRTA界に革命を起こしてやるぜ!」
私がオニ役だったので、皆を探しに行きました。
「出てこーい。いるのは分かってるんだ、観念しろー。あ、いた」
「お願いだ、見逃してくれ」
「お仲間は捕まったぞー。おとなしく出てこーい。あ、いた」
「仲間はどーなってもいい…オレだけは見逃してくれぇ!」
早々に最後の1人になりました。
私はすぐに見つかると思っていました。
しかし、どこを探しても見つからなかったのです。
「おーい。そろそろ帰るぞー」
「どこいるんだー?」
「……やっぱ帰ったのかな?」
どれだけ呼びかけても返事が無かったので帰ったと思い、日も落ちかけていたので私達も帰ることにしました。
「ただいまー」
家に帰ると驚かれました。
私達は半年も行方不明になっていたというのです。
私が探していた最後の1人は、あの日の夕方に、すでに帰ってきていました。
まさか私達の方がいなくなっていたとは思いませんでした。
◇◇◇
この話を語ってくれたUさんは「久しぶりにあの廃墟に行ってみようかな」と言った数日後に、行方不明になりました。