ガソリンスタンド3
「先輩、今日も暇っすね」
「ああ、暇だな」
この人は本当にわかっているのだろうか?
この店が危機的なことに。
「先輩知ってます?」
「何をだ?」
「今日この店営業開始してから6時間経ってるんですよ」
「ああそうだな」
大丈夫だまだそこは覚えているようだ。
「なのにお客さん3人しか来てないしうち1人は馬鹿だし」
「う……む」
「合計で出たガソリンの数52っすよ?」
「……」
返事がない逃げ出したようだ。
逃げ出してんじゃないよこの野郎。仮にもここの責任者だろ。
どうすんだよこの店。
「だが無くすわけにもいかんだろ」
「まぁ来る人は来るし配達もありますしねー」
ジリリリリリ、ジリリリリリ
噂をすればなんとやら。
「俺出ますね」
「ん」
「はい、橘石油店です」
『恐れ入りますぅ。わたくし共倒れ生命のものですけどもぉ』
「間に合ってまーす」
『あっちょ!」
ガチャ!
ちっ仕事の電話じゃねーのかよふざけやがって。
暇すぎて時間の流れが遅いんだよ。退屈なんだよ拷問なんだよ!
はぁ
「おう、誰だった?」
「共倒れ生命」
「何その信用できない名前の生命保険」
「さぁ?一緒に倒産しませんか?ってことじゃないですか」
「え?何?嫌すぎなんだけど」
俺だってやだよ。仕事先なくなるなんて。
今更ニートになるとかごめんだ。
「先輩みたいにニートになるのは嫌です」
「よーし待て、どうして俺がニートになることが決まってる?」
「え?先輩ですし?」
「答えになってないからな?」
今日も今日とて馬鹿な会話をしながら一日の終わりを待つ。
え?馬鹿が出てない?……知らないな。