病み魔法使いの死闘
ししょーが頑張ります。題名の通りです。あー戦闘シーン全然書けてないんじゃー。熱意はあるけど文章力が追い付かない!何でじゃー。しょーもない情景描写はしてるくせによー!
指が震えだした。今度は何だろう。頭も回らない。杖を洞窟の床に突き立てるとぬるりとした感触があって、出血量に気付いた。
これは肩だけじゃない。脚。腕。脇腹。痛覚が遠すぎるのだ。とりあえず止血するが、ふさがっているのかどうかいまいちわからない。他にも傷口があるかもしれないがしばらく大丈夫だろう。だといいな。
(傷を複数つけるあたり、間抜けな割に考えることは考えている、のか?単に俺が気づかなかっただけのような気もするが)
だが、まだ手詰まりではない。時間は倍かかるけれど、動ける方法があるのだ。
軍では教わるだけ教わって、絶対使うな、絶対だぞ!とくぎを刺されるだけの裏技と言うかチート技。
チートと言っても爽快に敵を吹っ飛ばすようなものではない。見つかると出禁になるくらいのリスクをしょって行う、カンニングの方の意味に近いものだ。そもそもこっちが常用なのだが……。
協奏と原理は似ているが、いまだかつて彼自身も使ったことがないという点で一線を画す。
覚えていないだけで、使ったことはあるのかもしれないけれど。
「……やるか。人形師の糸よ、骨を伝われ」
感覚はないままだが、右脚が動いてしっかりと地面を踏みしめる。震えが止まった。物体操作系の魔法で、有機物・無機物、生物か否かにも関わらず直感的に動かすことができるようになる。
そう、まるで自分の体であるかのように。
「むむ?詠唱……?魔導師は、詠唱の必要がないのではなかったかな?それとも……普段は、と言う話か」
「何だっていいだろう、そんなことは」
無理やり不敵に笑って、自分の代わりに魔法を構築させている杖をカバンに押し込む。
憑依の魔法だ。自分を、正しくは自我の一部を一時的に切り分けて別の何かに宿らせる。魔力は精神に依存するから、杖でも魔法を作れるのだ。
今、自我の半分を杖に宿らせた。それにより大魔法の構築が遅くはなるものの勝手に進む。物体操作の魔法を使うより前にこの憑依を発動した。さっきの詠唱は、憑依を悟られないためのカムフラージュである。
気がかりは竜族が相手の状態を見抜く目を持つという学説だが……。
「さあ……やろうか、続きを」
「おお!総力戦か!オラワクワクすっぞ!」
杞憂だった。学説なんか信じない。優秀な鈍器こと、杖をカバンにしまったわけだが、もちろん徒手空拳で挑む気はない。といって剣などが効くとも思えない。
まして彼が扱えるのは技量的にも体力的にもサーベルのみだ。ツーハンドソードとか大雑把な鉄の塊ならともかく、こんなものでは頼りないことこの上ない。良くて紙細工、悪くてティッシュ。
カバンに手を突っ込んだ。しゅるり、と細く裂いた皮を編んで作られた全長5メートルほどの鞭が姿を現す。利き手でぐっと握り込む。
「何でも出てくるのう。四次元か?」
「そうかもな……作り方は知られているが、実はどうしてこうなるのか誰にもわからん」
たかが皮の紐と侮るなかれ。ゆらゆら、先端を動かして調子を取ってから手首を返した。鞭がドラゴンのすねを打ち据える。
「ぬ!?何だ今の!?ばちっと来た!」
「叩いたからな。」
熟練すれば小さい動きでもそれなりの打撃が期待できるロマン武器。学者曰く、龍鱗には斬撃が効かなくても、打撃はある程度通るらしい。
要は効果がないように見えてもひたすら叩けば中の骨を粉々に砕くことができるということだ。むろんそこまでする気はないが、「痛い」はず。
いくらか叩くと反作用で壊れてしまう重たい鈍器より、軽くて柔軟な鞭で衝撃を与える方が持続力も効果もある。
「あいたっ!?」
「避けなくていいのか?内出血が増えるぞ!」
もちろん片手を空けておけるのも利点の内だ。ぐっと地面を踏みしめて、蹴る。壁に着地。この魔法をかけている間は壁を走るくらいなことはできる。
あとでどうなるかは考えたくないが、付加系の魔法を別掛けしなくていいんだからイーブンだろう。
あとは……あとは、時間をどうにか稼ぐだけだ。
「円盤よ、彼の額を砕け!」
「防御しているはずなのになんつう唱え終わりの攻撃的な呪文なんじゃ!?」
「くそっ!反応がいちいち面白い!馬鹿め!」
盾とかにはよくある呪文なのに!魔法に精通しているとかいう学説もお蔵入り決定だ。科学は皆を幸せにするためのものでもなかった。ブレスの威力を盾で殺してから、殺しきれない分は自分が動いて躱す。
ジリ貧にも程がある。戦争時に行き会った鉄の暴風の方がましに見えるくらいだ。こりゃあ一時軍の中でドラゴンを訓練して前線に立たせるなんて夢物語が進行していたのもやむなしか。
(確かあれは、まずどうやってそのドラゴンを捕まえてくるのだと言ったら誰も何も言わなくなったのだったか)
「くふふっ」
思い出して笑ってしまう。笑ってる場合でもあるまいに。元の俺はのんきな人間でもあるのだろうか、などと思ってみる。
両親がいて、場合によっては妻子までいたりして、ごく平凡な家庭の一つもあったのかもしれない。そのまま生きていれば。
いや、元の自分、なんてものを考えるのはもうやめよう。だって今はイルマの師、それでいいじゃないか。もう3度目にもなることを思う。3度目の正直であればよいのだが。
「思えば……あいつにはまだ教えていないことがありすぎる」
空いている左手の指をくいくいと内側へ倒した。それぞれの第一関節に、きらきらと釣り用のナイロンテグスが巻き付いている。握った拳を自分の方へ引いた。
「あやとりとか……な!」
テグスに剥ぎ取られた洞窟の床が三センチの板になってひっくり返る。バランスを崩したドラゴンはものの見事に転んでくれた。
「んなあああああああ!?あいだっ!」
このあたりの岩はある一定の方向へ向かって薄い板状に剥がれる性質を持っている。何もテグスで切ったわけではない。単に体勢を崩してほしかっただけでこんなにうまくいくとは思わなかったが、結果オーライだろう。
この『あやとり』は絶滅したエルフが使ったと言われるブービートラップの模倣と応用。あやとりなんて可愛らしいものではないが、原理としては似たようなものと言えるだろう。糸をしゅるしゅると巻き取り、頭を打って伸びているドラゴンの頭の近くに歩み寄る。
ああ、模倣と応用って、いつだってそうじゃないか。具現の魔法も、剣術も、自分の心すらも。
杖をカバンから引き出す。頭の芯に激痛が走った。杖と手の両方に自我が存在している感覚に吐き気がするのをどうにか抑えて、数える。3、2、1……ゼロ。
金属の塊が金色の先端を向けた。
「っ!?や、やめっ」
「――侵せ」
真っ暗な洞窟に、白い光が飛び散った。思わず瞼を閉じる。眩しいというより、痛い。肌がひりひりする。
高温と高圧で対象になった範囲内を消し飛ばす魔法だ。難易度としては初級。ある程度魔力があれば誰だってできるどころか、魔術師なら初見の見よう見まねで撃てるものだ。
威力はこの手の魔法としては大きくないが、ある一定のラインまでは注いだ魔力の分だけ威力が拡大する。まさに入門編だ。
それをありったけの魔力で撃った。
結果なんて、想像に難くないだろう?
魔法の名前が思いつきません。