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病み魔法使いの弟子  作者: ありんこ
梅雨前線
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節穴と逆光

回想はありません。ファンタジーさんもあまり息してません。あーもっとファンタジーさん出したいんじゃー。

「そういえば剣道場の人たちどうなったの?」

「ああ、あの軟弱な奴らか。俺が師匠にやらされた修行のスーパーマイルド版をやらせたら真っ青になってガクガクブルブル、もう膝が大爆笑だったぜ。ありゃあ駄目だな」

「うん、死ぬね」

 スーパーマイルドで真っ青。ここで問題です、セキショウ流ではどういう修行をしているのでしょうか。不思議と頭痛はしない。

「……明後日には人格が不可逆的な変化を起こしてしまうだろう」

「セキショウさん何したの?ちょっと、ユング。証言ちょうだい」

 何にもしてませんよー。空々しい声がバスルームの中から響く。シャワーを先に浴びているらしい。誰が許可したそんなこと。

「ユングってさあ、私のこと先生先生って呼んでるわりに尊敬している感じはないよね」

「そんなー。尊敬してますよ、魔神様の次の次の次の次の次の次の次くらいに」

 いっぱいいるじゃないか!私の上!イルマが風呂場に特攻していくのをセキショウはひらひら手を振って見送った。

 ユングの推理はすぐに司法解剖で裏付けが取れることとなった。メンヘラ女の自殺だったわけだ。拍手喝采雨あられである。おーへいへいっと。これで町の治安がまた一つ守られた。

「守られてませんよう。16歳の少年がシャワーを浴びているときに14歳の少女がメリケンサック握って特攻してくる事案がまさに一昨日発生したじゃないですかあ」

 翌日、名探偵はぶつぶつ文句を垂れながら駅のホームで電車を待っていた。隣には例の第一発見者・魔導師である。

「知るかそんなもん。私はそれより風呂場に特攻してきた14歳の美少女にとっさの判断で大外刈りをかけた16歳の少年についてご意見願いたいね」

「正当防衛でしょ?凶器を持った相手に対して自分は風呂の中で素っ裸じゃないですか。さっさと鎮圧するのが得策ですよね」

 それなら両手首を握った時点で目的は達成されていただろうが!口にこそ出さないがイルマの表情はそれを如実に語っている。

「装備が左拳のメリケンサックオンリーの美少女に大外刈りの後チョークスリーパーっていうのは鬼畜のすることだよね」

「っていうか美少女って何ですか?どこにいたんですか?画面の中ですか?」

「あァ?目ェ腐ってンのかァ?」

 先天的に弱視ですけど何か?珍しくユングが張り合ってきた。しばしにらみ合う。殺気で蚊が落ちる。周囲から人がスーッといなくなった。

 雨の日は惨劇の匂いがするんですねえ。そうですねえ。空気を読まないディスプレイが今朝のニュースを放送している。あなた大変!ファンタジーさん、息してないの!

「……いいでしょう、凶器を手にした狂気装備の美少女を相手に本気でかからなければどっちが死ぬんですか」

「コロシャシナイよー、死ぬよりムザンナ目に会わスダケダヨー。コロスナラ魔法を使うよー」

「御免ですね。巨乳熟れ熟れ眼鏡の似合う美人女教師にならともかく誰が小便臭いガキンチョに拷問されねばならんのですか」

 沈黙がホームを押し包んだ。二人が見つめあう。

「……何だか最近、ユングのセリフが猟奇的な気がする……もしかして私のせい?」

「……おじいちゃんはもしかすると小便臭さをこそ求めていたのかもしれない」

 そして憑き物の取れたような顔で二人は握手をした。な、何だかよくわからんが和解したらしいぞ。これで一安心か。皆!丸太は持ったか!?人が戻ってくる。

「ところで先生。男性の全裸を見た感想をどうぞ」

「ごめん、言っても大外刈りからのチョークスリーパーで落ちちゃったからちゃんと見れてない。ただ小さかった気はする」

 何とは言わないが何かが。

「あらら。そっちに目が行ってましたか。ほんとは遺伝学の学者さんが鼻水垂らして欲しがるような貴重映像があったのに」

「どこがだよ短小」

「ご心配なく、あとでとっくりお見せしますから」

 むむう。そこまで言われたらちょっと見てみたくもなるもんだ、と思った。つまんなかったら爆殺しよう。そうしよう!イルマが決断したところで電車がやってきた。乗り込む。

 ラッシュアワーは避けたはずだが、けっこう混んでいるものだ。人と人の間に挟まるようになりながら電車に揺られる。痴漢対策に自分の周囲に意志拘束系の結界を張る。

 一応、意志拘束系なんて違法もいいところなのだがかかっている人は気づかないしかかっている人を外から見て気づくこともあまりないから正義だろう。エロ親父も不登校女子中学生なんか触って捕まるのは嫌だろうし。

 意志拘束系の結界で気づけるとしたら、そうだな、「生きた母親の内臓をずるずる引きずり出しながら禿になる呪いの呪文を唱え、さらにくるくる回りながら盆踊りを無限に続ける」とかのへんちくりんな意志の拘束とかにすれば外から見ても分かるだろうか。

 今の効果は「しばらく人間に触りたくなくなる」だから違和感があるとしてもラッシュに嫌気がさしただけのような感じになると思う。

 完全犯罪乙!

 なお、禿になる呪いの呪文は「はーげはげはげー」と繰り返すだけというシンプルなもので、魔法に詳しくなくても唱えた瞬間相手に何の魔法かわかってしまう鬼畜仕様である。

 魔力が足りない場合無限に繰り返すことになってしまうあたりが製作者の間抜けっぷりを教えてくれる。

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