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病み魔法使いの弟子  作者: ありんこ
過ぎ去ったあれやこれ
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剣の舞‐2

文字数が恐ろしいことになったために二つに分かれてしまった話の後半部です。むしろこちらが本番です。剣士ってやっぱりロマンの塊ですよね。

「うん、化け物だね、ししょー」現在のイルマは深く深くうなずいた。「しかも私の目の前にいるよ」

 彼女の回想の間にユングが擦って軌道を変えた鉛弾は、狙いを定めてちゃんと彼に向っていったものだけなのだが、かるく40発は超えていた。

 そのすべてを目で、いや、いま目はろくに見えていないそうだから、耳か、鼻か?とにかくその感覚器官でとらえて『擦り』、軌道を変えて自分は最初の位置から一歩たりとも動いていない。

 それどころか首をかしげて、

「もう終わりか?」

 とすら聞いてくる始末だ。いや終わりでしょうよ。だって普通に外れたのも入れたら弾の数は百を超すでしょうよ。むしろ猟銃しかないのに頑張ったほうだよ。

 眉間にボーンと、頭痛が痛い。大切なことなので重複しました。この頭痛も何回目だ。

「死にたい奴からとは言ったが、無生物から送り込むことはあるまいに」

「う、うわあああ!化け物ぉおおお!」

 恐慌に陥った村人たちが『化け物』へと突っ込んでいく。レミングの群れが海へ身を投げた。化け物の方では獰猛な笑みを浮かべた。

「そうか、貴様ら全員かッ!」

 舞踊を見ているようだった。

 扇を手にした少女の代わりに中心で剣を手に少年が踊る。羽衣の代わりは剣閃と血しぶきだ。悲鳴と怒号が伴奏の代わりで、舞台の後ろにどんどん動かなくなった人間の体が積みあがっていく。

 何が、これでもレイピアが扱える、だ。達人じゃないか。

 勿論ここまでのことをするのに身体能力というのもあるだろうが、今の彼は明らかに遊んでいる。

 それはまるでネズミをいたぶる猫のように。あえて致命傷を避けてみたり、そうかと思えば無意味に切り刻んだり。技術的な側面も大きいだろう。だがイルマが感じたのは別だ。

 何が意外と動揺している、だ。この快楽殺人鬼め。楽しんでるじゃん。何が決闘だ。一方的な虐殺じゃないか。

「ふふっ」

 唯一浴びた、頬に飛んだ血を拭って半人の少年が笑う。

 何人斬ったか、見ていても確かなことはわからなかったけれど、いくら何でも返り血が少なすぎる。常に返り血を浴びない位置に自分の身を置き続けていたのか?じゃあ何でそれだけ浴びた?

 いや、理由なんかないのだろう。したいからした。それだけなのだ。

 そのまま少年はこちらへ歩いてくる。イルマの拘束が解けた。両手を上げて、彼女を捕らえていた四人が一歩下がる。

「わ……わかった、降参だ!娘は開放する!だから……」

「ふふふ……あははっ」

 ユングは歩を止めない。

「だから……、」ざりっ、と土を踏んだ音がした。一人がよろめきながら逃げてゆく。「斬らないでくれええええ!」

 嘆願はどこにも届かなかった。殺戮舞踊の続きが始まる。逃げた一人も地に倒れ伏した。

 すべてが終わったことを見て取ると面白くもなさそうに刀身を拭い、鞘を拾ってきて納める。カバンの中に押し込み、入れ替わりにあの黒縁眼鏡を取り出してかける。

 きょろきょろあたりを見回して、仏頂面のイルマの姿を認めた。

「あー、先生いた!なんせ、見えてないもんだから、うっかり間違えて斬ってたらどうしようかと思いましたよ」

「ほんとそうだね。……私の今どうしようかと思うのはこの死体の山だ。どうするんだいこれ。殺人か暴行致死か過剰防衛のいずれかひとつを裁判長がお選びになるやつだよ」

 え?とユングは首を傾げた。

「死体なんかありませんよ?だってこの人たち、死んでないから」

「えっ?」

「えっ?って。生命維持に必要な内臓を傷つけないよう配慮しながらたっぷり恐怖と苦痛を与えた後で、祖母譲りの液体を操る能力でもって止血してるんですけど。伸びてるけど、脳震盪かいいとこ重度の貧血ですよ。今頃間違えて行った三途の川で職質受けてるでしょう。戦意を殺ぐ、変に優秀なのは命を殺ぐ、でしょ?」

 必要以上に優秀な助手を持ってしまったようだ。素直に感心する。

「すごいね……何で私の下にいるんだい」

「僕が先生より弱いからです。他に理由はありません。軍に連絡しましょう。ヘリが必要です」

 ヘリコプターで帰ったから山からの生還率は100パーセントだったけど、村人とかいろいろ混ざった盗賊団がその後どうなったのか二人は知らない。盗賊団一斉検挙のおかげでイルマたちの家計が潤ったのは確かなことである。

「あのさ、何で最後にちょっとだけ返り血を浴びたの?しかも顔に」

「恐怖を与えたかったけど、服を汚すのは嫌だったんですよね」

 子供っぽくユングが口をとがらせて言った。ふうん。理由はあったんだ。イルマはユングが抱えているマントを、ジッと見た。血まみれの白いマントを見た。

「……そっちは避けられなかったみたいだね」

「……最初に脱いでしまったもので」

 今度クリーニングに出します、とため息混じりに呟いた。センスがバイオハザードのマント、なんだかんだ大事にしてるんじゃん。なんとなく和む。

バトルシーンがうまく書けないです。スピード感も出ないし、何かコツがあったらいいのだけど、知りませんか?

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