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病み魔法使いの弟子  作者: ありんこ
前フリ
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裏切りの名前は知らないけど その1

 ありんこです。季節の変わり目はしんどいです。今回はそうですね、ユングにここまでで最大のダメージが与えられます。それ以外はそこまで特徴がないですね。

「えーと、えーっと」

 キッチンに移動し米を四合量る。最近三合では微妙に足りなくなってきた。腕まくりして洗米。ユングのほうを見るとまだ悩んでいるようだった。

「一応高いのはやめてよね。私が作れる範囲で頼むから」

「はーい!そうだっ!こないだSNSで見た手毬寿司作ってください!」

「ハハッ、冗談もほどほどにしなBOY」

 イルマはSNSというものがどうしても気に入らなかった。自分の情報を拡散して何が面白いんだ。そこから始まってすべてが気に入らない。

 寿司一つとってもこうだ。カワイイって何さ。噛み砕いて飲み込むんだぞ?行きつく先はウンコだぞ?

「恵方巻には少し早いけど、巻き寿司しよっか。具は今から買ってこよう。海苔はあったかな?」

「おすしー!」

 手毬型にそこまでこだわりのなかったらしい助手はさっと財布から燦然と輝くクレジットカードを取り出した。おお、わかっている。さすが財布。でも君も行くんだぜ。

「僕はさっきラードを一気飲みして気分が悪くなったので休みたいです」

「そりゃ大変だ。外の空気を吸いに行きたまえ。さぁ」

 本日のネタはサーモンと、レモラと、シュイフーと、チーウェン、ザラタンと、いくら。なかった海苔と切れかけていた醤油、ついでに今日使うわけではないが安かった卵もユングに搭載して帰路についた。あと牛乳。計算通り。着いたらご飯も炊けていよう。

「でもザラタンって要はクジラでしょ?手巻きずしになるんですか?」

「するんだよ。クジラははりはり鍋だけじゃないのさ」

 うーんはりはりもよかったかもー、などと一丁前に言っているので尻を突いて急がせる。誰が料理するんだ。どうせザラタンは買いに出ることになっただろうに。

「あと、何で代用魚にしたんですか?僕のカード使えばブリやヒラメも買えましたよね?」

「ああっ、た、たしかに」

 しまった、気づかずにいつも通り全力で三割引きと魔物を買ってきてしまった。贅沢と言えるのはいくらだけだ。貧乏性が恥ずかしい。ここはもっといい魚を買ってくるべき局面だった。

 熱を帯びた頬に手を押し当てて後悔の吹き荒れる胸中をどうにか押しとどめる。動揺を隠せないイルマを見て、ユングはにやりと口角を上げた。

「やだー、先生ったら意外とピュアなんだから」

「ピュアじゃないし。ピュアじゃないし!財布は長く使う主義なだけだし!」

 うふ、ワルぶっちゃって。真っ赤になって照れるイルマのやたら内角を狙った抉りこむようなショットを甘んじてボディに受けつつ笑う。卵などが入っているマイバッグはさりげなくかばう。

 中々の威力だがそれなりに受け身を取れば痛いだけで実質ダメージの伴わないマゾに最適のアトラクションである。そして剣技と格闘において絶対の自信を持つ彼にとってその程度のことは児戯にも等しい。

 甘い甘い甘い!若干十四歳の魔法系女子ごときがこの僕をどうこうしようなど千年早いのですよ!

「あっははははは!もっと!先生もっと殴ってッ!僕を痛めつけて!もっと蔑んで!尊厳を踏みにじってぇええ!」

「おっ……往来で何てこと口走るんだいこの変態!」

「うがっ!?」

 全く読めていなかった死角からの攻撃。思わずうずくまる。相手が相手だから油断していた。普段なら絶対に食らわない。本来道具などを扱うための器官である手・拳による打撃ではなく地上を移動するために使われる脚部による攻撃。

 つまりは蹴りであり、今回はその『高さ』と立ち位置などの関係から膝による打撃であったため俗にいう膝蹴りなのだが、そんなことは関係なく、いやあるのか、日々自重を支えているだけのことはある鋭さと速度を以てやってきた衝撃。

 さてそれがなぜ自分に向けられたのかということを理解するべく己の発言を振り返るとなるほど独白と実際に口にした言葉がひっくり返っており。

 次回、その2.

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