心の穢れチェッカー
お久しぶりです。忘れられてますかね。はは。ちまちま更新していくのでお暇でしたらどうぞと何回目かわからないコメントをつけて、本編をお送りします。
心の穢れとは、いわゆる下のお話です。
降りてきたのは乳母車を押すおばさん一人だった。小さい子が寝ているが、なぜか蠅が留まっている。
「あ、くしゃみした」
「先生?」
「あーうん席取ってー」
なんだ生きてたのか。
ユングと並んで座る。見渡す限りじーさんとばーさんと昼間っから酒とつまみをかっ食らってる日雇いっぽいおっさんばかりだ。
広告を見る。人はいるけど人材はいない矛盾だってさ。じゃお前が雇えよ。今すぐによ。
雑誌。アニメの乳首には目くじらを立てるのに、「欲望の夜 ~朝ドラ女優とラブホ三昧~」とか「○○に新疑惑!これはちょっとアッ――!やしいですよ」は電車内の吊り広告にしてもいいのか?
深夜番組と違って電車通勤・通学の人は否応なしに目にすると思うが大丈夫なのだろうか。それとも今週の心の穢れチェッカーか。ぴゅあぴゅあはーとの皆さんには何のことだかわからないからいいんですよなのか。
大学のオープンキャンパス。お昼が無料で食べられるかどうかという最も大切なポイントには一言も触れてないや。クソだね。絶対F欄だこの大学。間違いない。
やがて電車が走り出した。つり革がゆっくりゆっくり揺れている。
つまんね。
何か暇つぶしでもしようか。人生なんか壮大な暇つぶしみたいなもんだけど。
「回想とかか……」
「え?回送?今の人乗ってませんでした?」
うるせえ。
「今日は挑発について教えようと思う」
わーい。怖い大人に囲まれながらイルマは惰性で歓声を上げた。師は仕事帰りにイルマと一緒にやくざの皆さんに囲まれたのだ。
このころはまだエアスポットに新たな活路を見出すべくあちこちの組員が来ていた。最終的にコルヌタの暴力団は全体が衰える。
この日は日差しが強い夏の日だった。七月だか八月だかはっきりしない。ただ計算すれば、八月の初めのようにも思われる。
「すみません、少しお時間いただいても――」
「これは結構大事だ。人生のテストに出る。転換点という名のな」しれっとインテリ感のあるお兄さんの言葉を遮り師は続けた。「戦場で相手を挑発するメリットはどんなものかわかるか?」
イルマはちらっとインテリヤクザを見た。サングラスで目元はわからないが、口がぽかんと弛緩している。よし、反応できてない。今の内だ。さすがに大人がしゃべってるのを無視するのは気が引けるからなあ。
「ええっと、正常な判断を鈍らせる?」
「おい、ちょっと――」
「うむ悪くない。だがちと足りないな」
うーん。イルマは少し考えたがよくわからなかった。魔導師は彼女にそこまでは期待していなかったらしく、では次は実践だな、と笑った。
「実践?」
「あんたいい加減に――」
「そう実践。ここにいい感じの社会不適合者どもがいるだろう?ボランティアなんぞ柄じゃないが、誰かがやらねばならないのでな。たまにはゴミの片付けもいいだろう」
しれっと自分の周囲をゴミ扱いして、それからやっと男はキレかけているインテリヤクザに視線を向けた。藤色の瞳がじいっとその顔を見つめる。しばしの沈黙の後、やっと順番が回ってきたとばかりにやくざの人は口を開いた。
「あ――」
「もちろん本来、挑発は自分より強い相手にするべきだ」
順番などなかった。やくざの人たちなどいないかのように魔導師は優しくイルマの頭を撫でた。最近は撫でるのが上手くなってきた。もっと撫でい。
「こんな三下には挑発なんかしている暇があったら銃の魔法でも適当にばら撒いて帰ったほうがいい。どうせ雑魚だ、反応もできん。
「だが脳ミソの代わりにグラサンが詰まっているようなヒトモドキくらいしか俺に喧嘩を売る愚か者は残っていないからな……仕方ないだろう。これも地域への貢献と思って割り切ろう」
既にやくざの皆さんへの挑発はだいぶ行われたような気もしたが、イルマはもう気にしないことにした。たぶんししょーは挑発してるつもりない。素だ。やだーししょーったら天然。
「それで、ししょー。挑発ってどうやるの?」
「うん、それはな……」
師の背後で鉄パイプをアスファルトに叩きつけた音がした。風で傷んだ金髪がさやさやと揺れる。とうとうインテリヤクザさんが怒ったのだ。よく耐えたと思う。しかしイルマは師の言葉をばっちり聞き取った。
「テメエらンだゴラァ!さっきから下手に出てりゃあよう!」
何かと聞かれれば、やることは決まっている。イルマは師とともに振り向いた。脚は肩幅。両手を突き出す。相手に向けるのは手の甲。中指はピンと天を指す。師が真顔になって言った。
「そうめんで首吊って死ね!」
「△※×ーッ!?」
インテリ感のあったやくざがとうとう人語を話さなくなった。なるほど、知性をばっちり下げられるようだ。
「ねえししょー、首吊るのはうどんじゃなかったっけ?」
「うん。だがそんなに違うか?」
どっちも小麦粉でできた麺だぞ。
「太さが違うよ、だいぶ」
ふーん。頷いて、後ろから飛びかかってきた一人を肘で張り飛ばした。たーまやー。正面の顔面を正拳で砕き、ひらりと身を滑らせて横から来た奴の顎の下に蹴りを入れる。男は回転をつけて吹っ飛んだが師は不満なようだ。
「甘いな……首を落としたと思ったのに」
「張り合うポイントおかしいよね」
男たちが手を伸ばして掴もうとしてくるのを必死でかわす。その手には乗らないぞ。
師はイルマを守っているようで実は守っていない。イルマがその後ろへ逃げ隠れしているだけだ。彼によると、足手まといにならないようにするのは大事だがそのために敵と戦う必要はないのだという。
戦うべきは強い味方だ。
AKBックリマン、恋人はポッキー。
最近お菓子業界が病気なのではないかと感じています。ックリマンって……「は」ポッキーって……。いやあ怖いですね。ポッキー牛乳に浸して食べられませんね。
大歓迎ですとも。