落下
ありんこです。本編です。パソコン買い換えたら文字が一つ変換できなくなったとです。でもそんなの関係ねえ。どの字が変換できなくなったのかはこの回でわかるかと思います。
でもそんなの悲しくねえ……。
「観念しましょうよ、先生」
「うー……嫌すぎる」
そして現在、カミュに置いて行かれたイルマはユングとともに迷宮の入り口を見下ろしていた。服装はいつもとは違って、どちらもノミ対策に渡された分厚いつなぎのようなものを着ている。
杖はひとまず鞄の中。このつなぎはもちろん出てきたら脱いで付着したノミごと焼き捨てるのだ。なおこれを着てもノミの30パーセントほどは必ず噛みついてくる。実体験だから知ってる。
あの時ばかりはししょーの薬漬けの身体がうらやましかった。
「もう決まってるの。服も配給されてるの。行くしかないでしょ」
「でもでもー。ていうか、君は戦いたいだけだろ?一人で行けよ。私はヤだよ。入金だけよろしくね」
ユングのメガネが光った。む。嫌な予感。
「わがまま言わない!ほらっ」
「へっ」
迷宮の入り口から下って結構深いんだな、と思った。だってまだ地面につかない。木の根っこが瓦礫に絡まるのがよく見える。
壁の絵は本か何かで見たことがあったが、思ったより色鮮やかだ。というか、原形をよくとどめている。日が当たらないからかな?魔物もネズミなどの哺乳類も、虫も住んでいて非常に湿度が高いわけだからカビにやられそうなものだが、はて。
この緑はマラカイトで朱は辰砂だったりするのか?岩石絵具なら十中八九はそうだろう。だとしたら毒性があるからカビたり魔物に掘られたりしないのかも。いやしかし、こんな量なら体の大きい魔物は平気なんじゃないか?
いや、時空のゆがみなんだっけ。この絵も毎日再構成されているのか。だとしたら描かれた時のままであるとしてもおかしくはない。
ただ、そうなるとこの場所に時空のゆがみが発生したのはいつだ?絵も再構成の対象になっているのなら、当然、絵が描かれたあとにゆがみが出ているのでは?
だって魔物や動物は繁殖したり成長したりで、今まさにその中に落ちて行っているイルマ自身も特に変化していないわけだし――ぬ。
ぬ?
「うわ死ぬ!」
我に返ったときにはだいぶ遅かった。左右の壁にひも付きナイフを投げつけて紐の反動を利用、どうにか衝撃を殺し、足側に数メートル吹っ飛んで頭と腹をガードしながら転がる。遺跡の床は意外と凸凹していた。痛い。やっぱり地球って強いよなあ。
「あはは。先生おかしいー」
のんきに笑うユングを殴りに行って気づいた。途中から床が柔らかい。自分が落ちて行ったところを見る。こっちは遺跡の床。ではこの柔らかいのは……知ってる。
「冬眠中のワームさんだね」
この滑らかな鱗、低めの体温、皮下脂肪。間違いない。ワームさんだ。とぐろのサイズからして、けっこう大きい個体のようだ。ユングはこれを知っていたのだろう。あいつ熱視覚あるし。
冬でもなんでもないしブリニ迷宮は常冬みたいなものなのだが、彼らは冬眠する。ついでに言うとコルヌタのワームは寒冷に強く、気温が氷点下以下でも余裕で活動できる。
でも遺伝子に冬眠のプログラムがなされているので意味もなく冬眠してしまう。その間、絶対起きないし食事もできない。
なのでコルヌタでは同じく冬眠する他のワームたちと巣穴で競合しないように春に冬眠したり、起きた時に食料がすぐ手に入るよう夏に眠って秋に起きてくるなど、冬眠という言葉の意味を問いただしたいような状態になっている。
なお、冬眠についてはフィリフェルの人がそう最初に書いたから致し方ない。しかしタイムマシンがあったら、コルヌタのワームを見せながら「ホントにいいの?別に冬とは限らないよ?冬眠でいいの?ねえいいの?」などと言いがかりをつけに行きたい。
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