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病み魔法使いの弟子  作者: ありんこ
雪片舞う
345/398

小さいほうの後始末

 本編です。トイレの話じゃありませんよ。

 戻った魔導師たちは驚いたようだった。襲撃をかけて来たモブ9人、誰一人死なずに無力化されている。

「……嬢ちゃん殺せって言わなかったか?」

「うん、なぶり殺しにしろって言ったよ。だから生きてるのさ」ちらりと横を見た。ユングは……これ賢者モードって言うんだろうか?ぐんにゃりしていて説明してくれそうにない。

「だって、一番きっついのは拷問や殺害より生きて残りの人生損し続けることだろ」

 ソースはししょー。同僚たちはまあ確かに、と頷いて、もう一度モブのほうを見た。

「こいつらの袖、左右が縫い付けられてんだけど」

「即席の拘束衣だね」

 説明する気はない。というか、イルマが説明してもらいたいくらいだ。深く聞くな。

「あーそれですかー。レイピアでちょっと糸引っ掛けて縫い合わせました。自力で脱げないように他にも何か所か縫ってます。脱がせていじめるときは気を付けてくださいね。下手すると肉が爆ぜて血が飛び散りますよ」

「ひぃっ」

 喋れたのか賢者モード。猟奇的な説明にもほどがある。そっと耳元へ口を寄せて聞いてみる。

「ちょっと待ってよ。レイピアでどうやって糸を引っ掛けるのさ」

「何言ってるんですか先生。どんなにいい刃物でも刃こぼれします。そこへ糸を引っ掛けるのです。僕だって自分が持ってるレイピアの状態くらい把握してます、どこにどんな傷があるかくらいはね」

 また当たり前のようにひどいこと言ってる。無理だっちゅうの。

「え、えー。どうやってさ……」

「刃がこぼれるということは鉄が落ちることです。わずかながら重さも変わるし、重心がズレます。ちょっと持ち上げればわかることですよね」

 言っていることはわからないでもないが、どう考えても人間の所業ではない。

「うん、私にはわからないってことだけはわかったよ」

「そうなんですか!?どうやって剣振り回してるんですか!?」

「握ってだね」

 その後屋敷には警察が到着し、屋敷内をざっくりと調べ事情聴取をすべく襲撃者の生き残りを連れ引き上げていった。メイリンだったものは司法解剖。過剰防衛で絞られたイルマはしおらしく反省の意を表明した。

「だって……その人強かったんだもの。無我夢中で……私、私……」

 ユングが火星人でも見るような顔をしていたが、警察の人はあっさり見逃してくれた。絨毯の弁償も言いつけられなかったし、上々である。ひとつの危機は去った。睡眠はしっかりとれた。イルマもこんなニンニク屋敷に長居はしたくない。

 しかし、危機的状況が終わったわけではない。そもそも最初に殺人予告をしたのが誰だったのかわかっていないのである。

 というのは、わかったんなら警察から何か言ってくるだろうし結果として魔導師たちは「明日から来なくていいよ」とハケン=ギリされるはずで、そうなっていないからそうなんだろうと予想している。

 ただ辞めてもいいとは思うが、それはちょっと社長さんたちがかわいそうな気もする。いや、建前か。本音はこうだ。

 正体わかってるし、見えない使用人事件を解決して出ていけば報酬に色つけてくれるはず!社長さんにも損はないんだし、ウィンウィンだよね!

「うーん、一皮脱ぐか」

「え!先生ストリッパーになるんですかぁ?つきづきしいですね!」

「現代語だとお似合い、だね。ていうか私がストリッパーにお似合いってどういうことさ……」

「ケバビッチ感ですかね!あははは」

「あははは」

 世にも奇妙な半人の駿河吊りを完成させたイルマはさっさと社長さん夫婦に話をつけて、さらに電話を掛ける。たぶんあの人はまだ休み中だろう。

 一番の当事者であるお坊ちゃまには詳しい話はしない。百聞は一見に如かずと言う通りあれこれ言っても理解できないだろうし、彼には一つのサプライズとしての意味も持つ。サプライズは隠しておくものだ。

 うむ、細工は流々。明後日になれば仕上げを御覧じろだ。今日はもうあとは仮眠室で寝るだけ!やったぜ!

「先生ー、下ろしてくださいよう。トイレ行きたいんですけどー」

「あ、忘れてた」

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