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病み魔法使いの弟子  作者: ありんこ
招かれざる訪問者
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他のお国柄

 異世界転生するなら、コルヌタとフィリフェルどっちがいいですか?一応ボルキイもあるけど。そんな内容です。

 さて、お待ちかね、フィリフェルという国の話だ。

 この国は神聖大陸に昔からあった人間の国である。発生がボルキイとほぼ同じ時期まで遡るが、国の体質が当初からがくっと変わっているため古い国という称号はない。魔導立国という名前からもわかるように魔導師が牛耳る国だ。

 元々はここも王国だった。魔法の研究が比較的進んでいて、たくさんの魔法使いその他がいた。だが、時の王は魔法使いたちを軽んじ富は貴族が独占していた。

 もう予想がついていると思うが、とうとう魔法使いたちがクーデターを起こしたのだ。

 軽んじられ無茶を押し付けられれば人は不満が溜まる、よくあることだ。溜まった不満に「あいつ(あいつら)さえいなければ」という手近な解決を想起するのもよくあることだ。

 問題は彼らにそれを実行するだけの行動力と武力があったことなのである。

 まず彼らは自分たちと同じく不満を溜めている平民など下層階級に目を付け仲間に引き入れた。武力もそうだ。フィリフェルは魔法が進んでいたために国防に魔法を起用していた。軍が身近だったのである。

 魔法使いたちは同様に軍も味方につけた。このころ、戦うものは野蛮なものとして見下されていたからだ。この例から、魔法使いは軍と引き離されるようになった。

 戦争時に徴兵ということで軍属に変わったりもするが、その場合でも士官待遇という名の箱入り固定砲台がせいぜいである。

 少し話が横道へそれたようだが、続けよう。

 魔法使いが軍と手を組んでクーデターを起こしたものだからフィリフェルには行き過ぎた実力主義が蔓延ることになる。偉い人は軍人か魔法使いだ。さらに指導者層を除いたことも影響した。

 絞る側がいなくなったから皆に富が行きわたるかと思いきやそんなことはなかった。魔法使いにあらずんば人にあらず、軍属にあらずは毛のない猿ぞ。ミクロには貴族にお情けを乞うていた時代から軍人や魔法使いに頭を下げる時代になっただけである。

 だがマクロには突然国がひっくり返ったわけで少なからず混乱が起き、国交に問題が出た。しかし、この特権階級には誰でもなれるという触れ込みがあったため不満はそこまで大きくならなかった。

 ナチスじみたこの体制は小さな変化を起こしつつも大方は変わらず今も続く。

 なお、実は神聖大陸では初めて貿易大陸(当時は雑種大陸と呼ばれた)からの奴隷の輸入を辞め対等な立場での交易をおこなった国でもある。これも先の実力第一主義によるものだ。

 そのころ神聖大陸へは多くの混血人類が奴隷として連れ去られていた。数は一億とも二億とも言われている。この中にはもちろん、技術者や魔法使いといった力ある者も含まれていたのだ。

 現在は弱者にも優しい国になったが、昔からの性格は変わらず怠慢を許さない。貧困から生活保護まではコルヌタの場合よりずっと遠いし、『国民の義務』が重すぎて苦笑ものだ。

 たとえば、まずないことだが、フィリフェルに悪霊が出現した場合には、甲種乙種に限らずすべての魔導師が無償で殲滅か消滅か撃滅することが法律で決まっている。極限状態を通して魔導の神髄に迫れることこそが報酬だと。

 死者と消費された財産については最低限の補償がなされるが、実際に戦った経験から言って割に合わない話だと思う。

 もっと近いところで行くと、国会議員として立候補するには最低でも魔術師の免許が必要だったりする。魔法は義務教育に含まれるからまだ楽だろうとのことだ。

 小学生からガンガン魔法覚えさせてどうするんだ。下手したら喧嘩で死人が出るぞなんて思ってしまうのだが、彼らが言うには相手も魔法を使えるから身を守れるとか何とか。魔法社会、銃社会と同じ度合いで理解に苦しむ。

 もちろんコルヌタはどっちでもない。チンピラが振りかざすのは尖ったナイフで警察官の装備だって防弾チョッキじゃなく防刃チョッキだ。

 これはどちらかというとハジキ持ったヤーさんより引っ搔いてくる魔物のほうが怖いからだが、同じだろう。まず銃が手に入らないのだから。

 しかも最近では難民を受け入れすぎて治安がカオスになっている。ナショナリズムと反グローバル化の煽りを受け時代に逆行しかつてのような軍と魔導師の国になるのも時間の問題だろう。

 というわけで、イルマの中では移住したくない国なのであった。

 他国の情勢はどんなでも遠い分には特に問題はない。荒廃しようがどうしようがどうでもいい。助けに?なんで?私は今、日々生きていくために必死なんだけどそんなことしなくちゃいけない?

 住所不定無職文無しにはなりたい人となってる人がいるだろうが、彼女はそのどちらでもなくどちらになる気もない。清貧などクソ食らえである。

 おいしいものは食べたい、楽しいこともしたい。人生は楽しんでなんぼだ。ボランティア。志は素晴らしいと思うが参加したいとは思わない。わざわざ自分が行かなくても誰か金と暇を持て余した人が行くだろう。

 私に働いてほしいなら金を出せ。それが今の社会が選んだ資本主義だ。そのように考えている。

 とは言っても今のところは寡占を避けるためにはたまた公共財の提供のために政府が介入する修正資本主義だ。助けてはくれるのだ。助かろうと思えば書類をそろえればいい。相手の立場になれ?そこまで落ちることないから考えないなあ。

 ゆえに、自分より他人を優先する自己犠牲というか献身的精神の持ち主はイルマの理解の大きく外側にいる。

 国の説明だけで一話が終わってしまったッ!

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