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病み魔法使いの弟子  作者: ありんこ
招かれざる訪問者
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またしても待ちぼうけ 後編

 だって文字数多いと読みにくいでしょう?気遣いのできる作者になりたかった人生だった。

「何の記事読んでんのー」

 めぼしい掲示板まとめサイトはもうだいぶ見尽くしたころである。新たな記事があるとしても一つ二つだろう。

 もし何かいいのを発見したなら次から見るものが増えるし、もしBL同人サイトでも見ているなら、それはそれで捗る。覗き込むべきである。

「あの社長さんについて調べてみたんです。あの人と殺人予告、どうもつながらなくって」

「うん、物静かないい人だよね」

「でしょ?……もちろん、まだ全部は読んでませんけど、やっぱり恨みを買うような人ではありません。労働環境はかなりいいですし、お給金も高いです。なのに」

「へえ」こいつ、逆恨みって知ってるんだろうか。「転職する?」

「しませんっ。もうっ、先生は何でそういうことばっかり!」

 眉毛を釣り上げて怒るユングをえいっと押しのけて画面に目をやって文章を斜め読みする。休日についての記載だ。

「土日と祝日休めるよ?」

「それが何だって言うんです!」

 本気で言っているようだ。じろりとやたら眩しい両目を見返す。

「できるじゃん、デート」

「うっ。……でも転職はしませんからね!」はいはい意志が硬い硬い。わかったから話戻して。「例の殺人予告、前後を見つけました」

「おー、すごいじゃん」

 今度ばかりは素直に感心した。さすがスマホ世代。情報化社会に見事に適応してやがる。過去のスレッドを遡って見つけてくるくらい朝飯前ってわけか。

 しかし、物質的生活にももう少し適応してほしいものだ。こないだいったん帰ったとき、掃除を手伝ってもらおうと思った時には姿を消していた。戻ってきてから手伝わせたら素晴らしく二度手間だった。

「この板、批判が主な話題ですね。この社長さん、海外に工場持ってるんですって」

「やっぱりダナ?」

「ええ。人件費が安いですからね。それで、ちゃんと給料払ってないとかって批判があります」

「ふうん」

 しかもまたお茶碗を割りやがった。今度からコイツには銅均のなんちゃって焼きのかるーい茶碗を使ってもらおう。もったいないもんね。

「理不尽ですよねえ。イマドキどこの会社も人件費の安い後進国に工場作って価格を抑えるもんなのに……」

「ユングでもわかってることだからねえ。ただ、失業者だっていつもいるからね、国内で雇用を作ってほしいって人もいるもんさ。その裏返しかもしれないよ?」

「厄介ですねえ」

 のびのびと背筋を伸ばして、ちらっと画面を視界に入れた。監視カメラのほうである。

「あれっ。今日、誰か来る予定あったっけ?」

「え?ちょっと待ってくださいよう。……ありません。予定は明後日です」

 来客ですか?ユングの空色の瞳が獰猛に光る。

 おーよしよしよし。どうどうどうどう。待てをしながら画面の中を見守る。

 人数は一人。和服の女性のようだ。持ち物は何もないようだが和服だ。何か隠してる思うの、常識。念のため他の場所の映像も見る。誰もいない。陽動ってわけじゃなさそうだ。

「この屋敷が街の景観を害するって苦情の類ならいいんだけどね」

 何の用かな。インターホンの対応は執事さんだ。事態によってはこっちに連絡が来るだろう。個人的には、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求するコルヌタ国民としてはそのような事態は避けたい。しかし、と隣に目をやる。

 うちの猛犬はそろそろガス抜きが必要かな。来るなら、来い。

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