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病み魔法使いの弟子  作者: ありんこ
招かれざる訪問者
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またしても待ちぼうけ

 夏だぜ!暑いぜ!ってなわけで、まだ涼しかったころに書き溜めた分を投下します。待つのは好きですか?私はその間何かしてていいなら割と好きかもです。

 あまりに長すぎるようなら途中で帰りますので、のーぷろぶれむ!

 それは、陸路でやってきた。

「平和だねー」

「全くですねー」

 前からいた八人の魔導師たち全員から『関わり合いになりたくない』というあまりに無慈悲な判定を受けたイルマとユングは、今日も二人で画面を眺めていた。二日目だ。ここまで何にもなかった。この先も何もないだろう。

 大体、この屋敷は見た目が厳つすぎるのである。どう見ても居住に適してない。

 軍事施設だってこんな攻撃的な形状はしていないだろう。庭もあるが、少々趣味が独特だ。それだけならよかろうところを、有刺鉄線を増設したコンクリートブロック塀に取り囲まれている。精神病棟か。

 カタギの人どころか殺人予告のねらーさんだって近づきたくないだろう。君子危うきに近寄らずってわけだ。ん?もちろんねらーさんが君子かどうかはまた別の話に決まっている。そういうのは別のところで議論すべきだ。

 とにかく、来る者は拒む、出る者は追い立てる、そういう屋敷なのだ。

 関係者というふわっとした言葉で包括的に表せる、会社の人とか銀行の人とかお役人を除いた訪問者がいない理由だってわかろうというものである。ピンポンダッシュですらハードルが高いのだ。侵入なんて、それ何て高嶺の花?

 いや、一度だけ侵入者があったか。迷い込んだ首輪付きのお猫様だ。仕事場の先輩がたからの心よりのおもてなしを受けた後、飼い主のもとへ返された。

 ふうん、皆さん猫派だったか。そりゃユングは関わり合いになりたくないよな。あいつ、犬か豚だからな。なお、かく言うイルマはどうやらハイエナのもようである。

 骨まで嚙み砕くのが得意な横文字のお友達だ。驚嘆しろ。

「あれ?」

「どうかしましたぁ」

 自分への問いに、今日のお昼、焼きニンニクバーガーをがぶりとやりながらユングが答えた。雅がどうとか品が何とか言ってたくせにこっちに染まってきてるのな。バーガーおいしい。

 ちなみに二人が食べているのは焼肉バーガーではない。焼きニンニクバーガーだ。

 ワームの肉をニンニクや醬油をベースにした焼き肉のたれに絡めて焼いたものをおいしく臭く焼きあがった大量のニンニクとともにニンニク風味のパンで挟む。もはやニンニクに対する嗅覚がマヒしてきたイルマだったが、これはさすがに胸やけがする。

 なお口臭対策グッズの備蓄はいまだ健在である。しかし口臭対策はしていない。だって自分がどんなに頑張っても、たとえば口の中をすーすーさせる強烈なミントの刺激に耐えるなどして口臭を抑えたとしてもこの家どこもニンニク臭いのだ。馬鹿らしくなってやめた。

「前にもこんなことってなかったっけ?」

 消化分解を助けるという特定保健用食品のお茶を飲む。しぶーい。けどその渋みがうれしーい。こういうのを配ってくれるあの社長さんは本当にいい人だ。

「はて。いわゆるデジャブですか?」

「そうじゃなくってー。もっとこう、具体的で現実的なもの」

 外は真昼間の秋晴れ。筋状の雲がきらきらする青い空は画面の向こう。ただでさえ窓の少ないこの屋敷で警備室に窓があろうはずもなく。蛍光灯が一本照らす部屋は昼なのか夜なのかもわからない始末。

「はあ」

 ユングは咀嚼し終えたニンニクの塊を飲み下し、微妙に臭いげっぷを吐いた。青みを帯びた光がもう一つ増える。スマホを取り出した。ネットサーフィンでもして過ごす気なのだろう。

 職務怠慢だが、イルマ自身がそれを注意するほど真面目に清く正しくお仕事をしているかといえばそんなこともないから見逃してやる。まっ、バレないバレないって。この部屋、盗聴器も隠しカメラも節穴もないから。

 残念、後半があります。

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