女子と男子と電子と
意外ッ!それは本編!みたいなやつですね。この話も章をまたぐかもしれません。でも話数統一したほうが数えやすいと思うんですよね。私が。
シフトはつつがなく決まった。
午前だったり午後だったりだが、深夜労働は避けられた。こういうときだけはこの年齢がおいしい。4時間ずつ、常に2人。
こんな広いお屋敷なのにそれでいいのかって?いいのだ。それとも何か、このご時世、21世紀にもなって監視カメラも覗けないの?なんで?
ゆえにただ椅子に座り画面を見る簡単なお仕事だ。それにサーモグラフィだってついている。まずないが、ハッキングされたらその時はその時。
何のための魔導師かといえばこのための魔導師である。有事の際は屋敷内で待機中のほかの侵入者絶対殺すマンがぞろぞろ出てくるってわけだ。
たまには違う人と仕事をしたかったのだが、なぜかユングと二人である。もううんざり気味だがそうなったんだから仕方ない。でも何でだ?どっちも子供ってことか?それは大人がつくべきなんでないのか?不思議だな。
そういえばほかの人たちも元のペアから変わっていない。全部で八人いるけどみんな最初に入って来た時とおんなじ組み合わせのままだ。警備室の薄暗闇の中で何かいけないことをしているとしか思えない采配である。
そうかそうか、私たちを信用してくれてるのか。イルマはそう思い込むことにした。子供だけど二つ名持ちってのは大きかったなあ。
むっふっふっふ。そうなんだよ私は悪霊倒して生還したんだよ!
「……の、割には『塔の魔女』と『朝顔の君』って名乗ったとき反応が薄かったような気もしますけどね」
瞬く九つの画面を眺めながらユングは言った。
ちなみに、他の皆さんがコンビを変えていない理由は大したことではない。皆さん普段からコンビでお仕事をしている人たちなのだ。いつもの相棒とのんびりやるほうが気楽でいいのだ。
イルマだって普通はそうなのだが、ちょっと相手が悪かった。誰だってリア充のくせに自己紹介が肉奴隷の変態と顔つき合わせて仕事したくないものだ。むしろしたい人いるのか?
本日のニンニク料理は砂肝の居酒屋風。ご飯は南方風ニンニク入りのおかゆ。内臓に悪そうでビールによく合いそうな味わいだ。だが……それがいいッ。なんたってお金持ちの家だから素材がいい。
「そうかなあ」
「そうですよう。あの人たちがピンと来たのは『病み魔法使いの弟子』のほうです。一瞬で顔色が変わりましたでしょ」
「青くなったり赤くなったり黒くなったりしてたね」
つまり私はまたししょーの権威に振り回されたってことか。ちっ。
なおかつユングと二人組にされたのもわかった。隔離だ。きっとししょーはあの人たちのうちの誰かにもトラウマを植え付けたんだ。まったく余計なことばっかりしてくれるししょーだよ!
初日は私語もほとんどなくとても真面目にモニターを覗いていたのだが、何も起きなかった。そういうもんかな。ネット上の発言は考えてなされるものでなし、本気じゃない時もある。これは現実でもそうか。
ごく最近真に受けて動いた挙句自分が殺られちゃった人がいたっけ?あの人名前は何だっけ。なぜだろう、思い出せないな。思い出せないってことは大したことじゃなかったんだね。