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病み魔法使いの弟子  作者: ありんこ
守ることとは
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長めの次回予告

 くぅー遅れました。

 天気予報が終わったところで、イルマは耐え切れず声を上げた。

「あのさあ!君何とか言ったらどうだい!?恥ずかしいんだけど!我に返ると恥ずかしいんだけど!」

 ユングはもっちゃもちゃと何回目かの口の中身をかみ砕いて飲み込み、水を一杯飲んでそれから言った。

「へったくそですね。間の取り方がひどくてホラー感はまるで出てないし、思いのほか短かったのと〆の『〇〇が××する■■!』みたいな煽りがなかったので減点35点。

「あとシナリオにチープさが足りません。でもシナリオは先生のせいじゃないですからね、減点5とします。それからもっと意味わからない単語出してください。たとえばゾンビアポカリプスとかシャークトルネードとかね。これは減点20。

「さらに文体に工夫が感じられないので減点15。最後に恥じらってる感じが何かウザかったんで20点引いておきます。ちなみに、満点は百点です」

 彼の『最後に』は『とどめに』だった。

「ま、まるまるがぺけぺけするブモオオオ……?ていうか私5点しか残ってないじゃん!ケチ!」

 思ったより辛口に批評された。この具体性はヲタクのそれだ。B級ホラー、好きなのだろうか。

「これでも甘くつけてます。ほんとはやる前に自らハードルを下げに行くあたりが小賢しくて不愉快だったのも入れたかったです。大見えを張って滑ったほうがなんぼかよかったですね」

 わーいボッコボコだー。

「……最後の『ウザかった』はただの悪口じゃない?」

「それはあなたの感想ですよね」魚の煮つけと山盛りのご飯で曇ったメガネをくいっとやる。スマホを取り出した。「せめてネタに走るにしてもこのくらいはやっていただかなくては」

――ある日。『L』の青年が『M』に襲われた『N』の少女を救い、『O』に――

 一瞬で読み取れたのはせいぜい中間部分のこれくらいだが、それ以上はイルマの脳が読み込みを拒否した。もともと本の虫だったのにさらに椅子に縛り付けられ、強制的に活字中毒者にされた脳みそが拒否する文章とはいったい何なのか。

「うえっナニコレ」

「詳細は知らないけどコピペです。じわじわ笑えてきます。……しかし大体の状況はわかりました」

「え?あの空欄だらけのやつで大体わかったのかい?君すごいね」

 ホテルの自殺人事件の時も思ったがひょっとして推理が得意なのだろうか。

「そっちじゃないですよう。依頼主の話のほうです。さっ、戻ってください」はいよっ。食事も終わったし姿勢を正す。

「僕がわかったのは『殺人または暴行をほのめかす発言はあったが、本気かどうかわからない。ただ実行されたら怖い』ということです」

「うん、そーなのだ。さすがに本気じゃなかろうとは思うけどもう何年も会ってないし、最近って変な人いるし。あといじめが結構ひどかったみたいでね、小坊のノリに戻られたら怖いとかって」

 ユングは静かにうなずいた。

「なるほど。ある程度年齢が行くと性的な方面にも嫌がらせが向きますからね。で、依頼主さん……」

「ジオットさんだね」

「彼はそのマリアさんとどういう関係なんですか?恋人や友人にしては動きが変ですよね。ある程度近い関係なら俺が守るしますよね」

「うん、ただの小学校の同級生だね。もう何年も会ってない。同窓会のことがあってから慌てて連絡先調べて本人と接触したって。顔を合わせたことはまだないみたい」

 食器を水につけて戻ってくる。もう今日は寝る前に食洗機を回したほうが早いだろう。テレビはニュースを終えてひな壇芸人を映している。

 あいにく三次元に強く興味をひかれない質で詳しくないが、それでもわかる。去年あそこに座っていたメンツはほとんど生き残っていない。みんな一発屋だったようだ。そして今いるメンバーも来年にはいなくなっているだろう。

 歴史を扱うドラマが大河ドラマと俗に言われるように時の流れは大きな河のごとく、人はそこを泡のようにかつ消え、かつ結びするだけの存在なのだ。

 今は人口過多……つまり泡だらけ……洗剤……なに!?環境汚染だと!?うわあああ!

「え?連絡先わかったんですか?小学校の時の同級生でしょ?いじめられてたんでしょ?変えてるでしょ」

 それが見つかったんだってさ、とメモを見ながら答える。

 家と人の関係もはかないものだ。朝顔に露が乗っている状態が人の入居した状態。花がしぼんで露だけが残ったり、露が消えて花がまだ咲いていたり……。

 この論法にのっとれば今度のマリアさんの場合は露が花を抜けだしてどこかへ姿をくらましていたことになる。わあい露さんったら行動的ー。

 そして彼女の行方は露知れずと相成るはずだったわけだ。露だけに。

「さて見つかりますかねえ」

「見つかったんだよ。そういうことにしとこう」

 そんな疑いの目で見られても本人がそう言ってたんだからしょうがないではないか。イルマの知ったことではない。

「わかりました、そのように考えましょう。よく見つかりましたね。奇跡ですよ」

「そんな君にこの言葉をささげよう!『奇跡は起きるものではない、起こすものなのだ』。まあそんなことはいいんだよ」じっとユングをのぞき込む。曇ったメガネを拭いていた。「君ってさ、護衛とかできるの?っていうかやったことある?」

「……で、できますよう」

 目が泳いでいる。経験なしか。おぼっちゃま、どっちかっていうと護衛はされる側だもんな。

 しかし誰だって初心者から始まるものだ。ジオットさんおよびまだ見ぬマリアさんには申し訳ないが、初心者の助手に仕事を覚えさせるのに使わせていただこう。

 いやなに、どうせことが起こるかどうかって言えば起こらない可能性のほうがずっと高いのだ。起きたとしても相手は人間、杖でぶん殴れば死ぬ。

「はいこんにちは。久々に次回予告のお時間です。すでに話が『長めの次回予告』なのに、さらに次回予告です。

「一本完結したのにこののんびりっぷりは何かって、次の話を書いているせいなんです。書き出しに一番時間がかかるんで勘弁してやってください。

「さて次回は『珈琲党』。業務連絡と業務相談と魔物図鑑をお送りする予定です。まあまあオタノシミニ。

「最後になりますが……僕のことなんて、誰も覚えてないでしょうね。第一章にちらっといただけの僕なんて……。

「一応、そのうち再登場するらしいです。たまには名ありモブな僕のことも思い出してください。

   ――アロイス

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