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病み魔法使いの弟子  作者: ありんこ
快楽の泉
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エコロジーよりエコノミー

 本編です。買い物します。

 次は服に着替えてデパートに向かう。民宿のおばちゃんによる情報で、夏物衣料の売り尽くしをやっているんだそうだ。売り尽くし、バーゲン、大決算セール。どれもこれも好きな言葉である。

 まずはTシャツだ。何にでも合わせやすいし、肌着にもなるし、寝間着にしても古くなったのを切って雑巾にしたりしてもあまり罪悪感を覚えない。

「雑巾にするの決定事項なんですか?」

「収納も無限じゃないし虫が食うかもしれないからね、処分するにしても何かに役立ててから捨てたいじゃないか」

 まず取り回しやすそうな大きさに切る。水を含ませて硬く絞り、階段や窓の桟など埃の多く溜まるところを拭く。拭いてドロドロになった面は内側にたくし込んで、別の面でまた違う場所を拭く。全面がドロドロになったらポイ。使い捨ての雑巾である。

 エコかと問われれば返答に困るが、考えてみてほしい。雑巾で桟を拭くと、大体雑巾は真っ黒になる。

 もちろん、毎日メイドさんが拭いて回るお家だとか、埃の溜まりそうなところを指でなぞっては「あなた、ここ汚れが残ってるわよ」などと言ってくるお姑さんのいるご家庭は別である。

 しかし、三十路の男一人と幼女でやりくりしていた家、その後少女が独り暮らししていた家、現在基本飯食って寝るだけの助手がいる少女の家が『別』のカテゴリに入るかというと、否だ。

 さてこの真っ黒になった雑巾だが、エコロジストの方々が推奨するのはこの雑巾を洗い、再度利用すること。確かにその通りだ。しかし、真っ黒になるまで汚れた雑巾を誰が洗うのか。

 そりゃあ、この場合はイルマだ。ユングはほぼ家事をしない。させると二度手間になるためだ。そして、イルマは『そんなの面倒くさい』のだ。他にもすべき家事はあり、すべき仕事がある。夜は寝る。

 新刊の魔導書だって買いに行きたいし、お気に入りの作家のBL小説も読みたい。たまには銭湯に行って羽を伸ばしたい。

 だから、捨てられる布で拭いてポイ、が一番彼女の中で『エコ』なのである。

「なるほど。行きつく先はボロ布ですね」

「同義ならウエスと言ってくれたまえ。横文字の方がしゃれて見えるだろ?それに布だから浴衣のお腹に詰めることだってできるんだよ」

「お腹?」ユングの眉がきゅううと中心に寄った。「これ以上太くなってどうするんですか」

 柔らかいバラ肉……ではなく腹肉に何かが刺さった。どうせ太いさ。ほっとけ。

「寝間着にするときはともかく、ちゃんとした浴衣はどれだけ寸胴に見せるかなんだ。ちゃんとしたやつは帯も硬いし、さらにお腹の前に帯板って言って硬い紙を入れるだろ?」

 ちなみに、萌え系のイラストによくある表現だが、実際に帯の上に乳が乗ると帯が折れる。大変危険というわけではないが、地味にへこむので真似をしてはいけない。

「だろって言われても知りませんよ」

 イルマはさっき掴んだTシャツをワゴンに戻した。よく見たら変な柄だった。もう三着取ったし四つ目はいいかもしれない。しかしボロクソに安い。さらに品質も申し分ない。値段と満足が脳内の天秤で揺れる。別のを取ってレジへ向かう。

「じゃあ今知りたまえ。浴衣に最も適した体形は寸胴。りぴぃとあふたーみい!浴衣に最も適した体形は寸胴!」

「浴衣に最も適した体形は寸胴!」

「よろしい。じゃ、次は肌着見に行くよ」

「はーい。しかしこれから秋でしょう?夏物の肌着はしばらく箪笥の肥やしでは?」

「わかってないなあ。夏の肌着は冷感生地のやつ以外はオールシーズンだよ。汗も吸うし通気性もいいしね。あとめちゃくちゃ寒いとき用に冬の長袖一着あったら一年やってけるね」

「肌着市場号泣ですね……」

 たぶんそれは大丈夫だ。お金の湯水のようにある人が間違いなく買ってくれる。そこの石油王とかな。

 綿混生地の肌着を買い込む。白で余計な装飾のないもの。汚れが見やすいし布がごそごそしない。肩ひもはストラップでなく幅の広い、ランニング型が望ましい。あと胸元にレースついてるやつは透けるのが気になるような服の時便利だ。

 ん?肌着にキャミソール?食い込む紐が四つに増えるとか鬼か。紐が捻じれた時めちゃくちゃ痒いぞ。しかも別にそんなとこ調整しないし。あれは肌着じゃなくて重ね着用のアイテムなのだ。

 下着コーナーも覗いたものの、こちらは特に安くなっているわけでもなかったし、デザインも気に入らないので離れる。

 ひょっとすると安くて良さげなものはさっさと売り切れてしまったのかもしれないが、もともとなかったのかもしれない。あまりうじうじと考えないが吉だ。

 ペースアップしたいぜ。でも手がついてこないぜ……。

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