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病み魔法使いの弟子  作者: ありんこ
快楽の泉
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入浴中。

 遅くなりまして本編です。ひたすら風呂です。

 薬草はいい香りがした。40分ほどで出たが、香りが髪や肌についただろうからこのあと通常の浸かるタイプの温泉に行くのが少しもったいないと思う。

「できたじゃないですか、お上品」

「そうなのかな?」

 はいと言う満面の笑みが果てしなくうさん臭い。どうやらほめて伸ばすことにしたようだ。

「さすが先生さん、なかなかできることじゃないよ、です」

「ユングそれちょとマズいネ……読んでないのに」

 額に小さな衝撃を感じた。デコピンだ。思わず閉じた目を開けると、何やらユングがニヤニヤしている。

「先生、メメタア」

「クソッ、誘導されたか!悔しい!」

 次は例の『星霜の時は経ずとも闇は覆う』だった。ミッドナイトスターと読むらしい。そして、ここはグリーンロアと同様、北の四天王スカイコフィンの眷属だそうだ。つまり源泉がスカイコフィンなのである。

 本格的に入ってるな。ひょっとして支配人は中学生の孫か何かに名前を付けさせたのだろうか。だとしたら名付け親は今頃、大公開の黒歴史にのたうち回っているだろう。ここは確か、オープンしてもうすぐ10年だ。

 完全にイロモノな名前に対し、中身は普通だった。

 室内型で、男湯女湯それぞれ浴槽が三つある。ひとつは源泉ほぼそのままのタイル張りのローマ風呂。二つ目は真珠が大量に入った容器から湯が沸く贅沢すぎる真珠風呂。三つめは月替わりの湯。六月はバラ風呂になるというが、今はハッカですーすーする風呂である。

 なお、どの風呂も足元のガラスタイルの中に真珠が入ってキラキラしている。

 ここでは園内着を回収して、新しい園内着を配っていた。どうやら、蒸し風呂や外をうろつき、汗だくになった客を浴槽に入れて汗を流させ、着替えさせるというループを延々繰り返すシステムらしい。オーナーの懐にはいくら入るのだろうか。

 90カウロ、安かったかもしれない。かけ湯の甕の底の光を見てイルマは思った。どう見てもこれも真珠ですありがとうございました。

 なお、もちろんここでは真珠業者との間にあるコネクションを最大限活用して真珠風呂の真珠はぎりぎり商品にならないものを二束三文で買っている。ガラスタイルの中の真珠もすべてが本物とは限らない。イルマもまだまだピュアピュアだった。

 近くにいたおばあちゃんに絡まれたりしつつ、約束の時刻に近づいてきたので上がる。お年寄りと関わることがそう多かったわけではないので、その心理は若者が珍しいのか、他の理由があるのかわからない。

 年齢的にはフロイトフロストあたりの死者が近いかな。でも死者だからあまり参考にならないな。生きてる人でかかわりのあるお年寄り、エメトくらいしかいないかもしれない。そしてあれは別物だ。

 お風呂はただ体を洗うためのものではありません。義務ではなく、権利です。

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