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病み魔法使いの弟子  作者: ありんこ
快楽の泉
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あるとないとじゃ大違い

 本編です。

 英雄の少女はちんまり申し訳なさそうにタクシーに乗ったという。こうも人にたかる日が来ようとは思わなかったのだ。申し訳ないというか、情けない。

「うう……ごめんね……最低賃金から住み込みの分で引き落としとか言って給料ピンハネして……」

「えっ、僕の給料ピンハネされてたんですか」

 情けなすぎて言わなくてもいいことを言ってしまう口だった。

「ナ、ナンデモナイーヨ」

「別にいいですよ。毎月実家から15ギデン振り込まれるので生活には困りませんし」

 日本円で約30万円だった。仕送りだけで年収が300万円を超している。別世界だ。別世界だ。ユングはタクシー代をこともなげにカードで支払った。こいつ……(経済力は)できるッ!

「ご実家に悪いし入園料くらいは私が払うよ……」

「おばあちゃんたちなら気にしないと思いますよ」へ?なんで?驚くイルマにあっけらかんとして答える。「だって最近、領内で石油出ましたから!」

 あまりの衝撃に自分の顔の皮がぴたーんと伸びたのを感じた。王は滅びたが石油王は滅びてなかった。そうだね、石油が消えるのはまだ数十年後だからね。

 そしてあの抜け目ないオフィーリアのこと、そのころには軌道エレベーターとか何かそういうものを作って石油に代わるエネルギーを手中に収めていることだろう。

「……うん、それは、気にしない、ね」

「でしょ!?」

 ああ、遠くで明るい笑い声がするような気がする……。衝撃すぎて何も考えられないままカウンターで支払いを済ませ、ロッカー室へ入る。

 下着まで全部脱いだうえで園内着に着替えないといけないのだ。つまりはバスローブである。ここで荷物を預けて服も着替えて温泉はそれからなのである。

 予想通り、イルマ以外は年寄りだった。数年前には温泉ブームとか言うもので若者も来たらしいが、入園料90カウロの壁は高かった。

 カップル割引も何だあれ。10パーセントも引いてなかったぞ。せいぜい5パーセントだ。それでも躊躇なく払う我が家の石油王。落ち着いてみると財布には最適なことが分かった。やったぜ。

 タオル地のもこもこした作務衣のようなものに着替えて、ゲート前でユングと合流する。この園内着は男女同じデザインだ。裏にカップとかついていない。いわゆる、ノーブラノーパンだ。

「ふふ。先生、ちょっと乳垂れてますよ」

「重力には逆らえないのさ。ここ地面に高低差があるしえげつないほど揺れるしせめてカップつけてほしいけどここのメインの客層じゃ一生ムリだね」

 折しも隣をおじいちゃんみたいなおばあちゃんが通り過ぎて行った。なぜおばあちゃんとわかったかというと、女子ロッカー室から出てきたからだ。

「はい、園内モノレールまでゆっくり歩きますよ。料金は入園料に込みらしいので手間が省けていいですね」

「使わなきゃ損なやつじゃんそれ」

 モノレールと言っても宙に浮いているわけではない。地面に直接レールが引いてあり、その上に3から4人乗りくらいの車体が乗って動くのだ。窓などはなく、船状の丸い座席部分の上にパラソルが広げてあるだけである。

 外から見る分にはすごく優雅だ。メインコースは単純に園内を端から端まで往復しており、乗っている側がレバーでレールを切り替えることでそれぞれのアトラクションの駅につく。

 駅にはほとんど人がいなかったので、二人で乗ることになった。内側には床も座席もいたるところに『脱水に気を付けましょう』『具合が悪くなった方は真ん中のボタンを押して緊急停車してください』などの注意書きが躍っている。優雅ではない。

 ちなみに生還率は80パーセントらしい。海に近いから魔物が上がってくることがあるのだろう。あとは……お年寄りだから、脱水とか?

 お金の話でした。大事ですよ、お金。

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