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病み魔法使いの弟子  作者: ありんこ
海へ行こう
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迷わず

 本編です。水着買います。みなさんは水着を買うとき何分検討しますか?ありんこは似合う似合わないがはっきりしているので五分かかりません。

 民宿から近くのデパートへもそう遠くない。とはいえ歩くと遠めに感じるので、一度駅に向かう。自転車を駅で借りてちょっと走ると古色蒼然としたデパートの『ラムプ総合百貨店』なる看板が見えてくる。

 ラムプ……いや、ランプとはこのあたりの旧国名である。日本で言うなら河内とか下野みたいなものだろうか。ネオンサインなのだが、夜になると『プ』の右上の○が点滅する。今も点滅するだろう。

 デパート本体はちょっとした地震でも来れば砂のように崩れ去るだろうぼろぼろの、そして当時としてはハイカラ……というより『はいから』であったろう曲線の多い建物だ。

 壁が卵色というか黄色みたいな変な色になっているところもそのボロい雰囲気づくりに一役買っている。

 屋上には今にも崩れ落ちそうな錆の浮いた観覧車がわずかに傾き、撤去する予算がないのかひとまず屋上が立ち入り禁止になっている。ここまで去年までと同じだった。駐車場だけは最近作り直して、ぴかぴかしているのが不似合い以上の何物でもなかった。

 しかしながら、それは外見だけの話である。

 内側は意外に小奇麗だ。少し古いデザインであることは否めないがよく磨かれた床には色ガラスなんかがはめ込まれている。

 店も若向けの華やかなものが軒を連ねており、その壮麗さは帝都の中心部に新しくできているショッピングモールに勝るとも劣らない。もちろん海が近いためビーチ用品も充実だ。

 まあ、見た目が見た目なので、新規層をなかなか獲得できず、売り上げはあまり伸びていないらしいが。

「けっこうすごいですね。別世界ですだ」水着売り場のキャピキャピキラキラした空気に目をそばめながらユングは一着の水着を突き出してきた。なぜ白のスク水。「先生色黒だから白とか似合うかなって」

 結構余裕だな。

「……隣の成人向けコーナーに戻してきな。まだガールズの方だから、私は」

 しかしガールズも大概、最近では過激なのであった。店員さんの置き間違いかと思ったがそうでもなさそうである。

 いきなり布面積小さい金色のビキニ。乳首しか隠れないどころか下からは陰毛出ると思うけど。完全に剃ることを求められているのだろうか?なのに盗撮防止加工。何か、赤外線を遮る素材で中身が見えないらしい。

 これもうわかんねえな。それだけ露出しといて全裸は嫌っていうのもよくわからないっていうか、そもそもその水着が恥ずかしくないか?ついでに言うと赤外線まで使って「透・視」してまで見たい人もわからない。

 水着というラッピングがなかったらただの有機物の塊だがいいのだろうか。大体中身見たかったら普通に声かけて仲良くなってピンク遊戯でも何でもすりゃあいいだろうに、その手間も惜しんで何をしているのだろうか。

 お忙しいことで、としか言いようがない。

「ねーねー、男の人ってそんなに盗撮に興味あるもんなの?」

「さあ。都会の人の考えることはよくわかりません」自分は違うよと遠回しに否定した。「あっでも、好きな人のそういう写真撮って、本人に見せて、めちゃくちゃ軽蔑されてみたいですね!」

 聞いたやつがそもそも少数派だったことに気付く。このデータは役に立たない。破棄。そんなことより水着選びに戻ろう。

「めでたく通報されるね。うん、今日も平和だ」

 こうしてイルマが選んだのはビキニではあるが割と無難なものだった。

 ちょっとだけ大人っぽい。濃いブルーで、全体にオレンジや白などのよく映える色のよくわからない民族っぽい模様が入っている。大きめのフリルが谷間の両側についていていい感じに膨らみを強調してくれるのだ。

 下は共生地、普通のパンツタイプだが履いた時正面の上辺中心に来る部分に白い貝のリングがつけてあるのがワンポイントだ。

「ずいぶん今風ですね」

「まあ君のと比べればね」

 新品だから今風だしそれ以前にスイカパンツと比べられたくはない。失礼だぞユングよ。

 これさえ買えばもう他に買うものはない。とっとと百貨店を出ることで浪費を阻止する。百貨店は財布のひもがいつの間にか緩んでしまう魔の空間だ。これ以上いたら何を買わされるかわからない。

 今風のやつに限って似合わない現象、誰か解明してくれたらいいんですけどね。

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