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遭遇

 ふー、やっと遭遇です。ここまで遠かった。次回からは伝説の『散骨 弐』です。おたのしみに。

「ところで……何かここ、臭くありません?」

 腰ぎんちゃくの発言にラナは飛び上がりそうになった。馬鹿な!洗ったはずだ!そりゃあ全部とれたとは言えないが、あんなところから臭うはずはない!

「うーん、言われてみれば……臭うね」

 思わず自分の腕に鼻をこすりつける。大丈夫、特に何も感じない。きっと別の話だ。しかし、と思い出す。自分の臭いには自分では気づきづらいという。まさか。まさか。

「どこかの非常に汚いトイレにゴミ捨て場を持ってきて、とどめに酔っぱらったおっさんがゲロ吐いて帰ったみたいな臭いがします」

「ああ、確かにどこかの非常に汚いトイレにゴミ捨て場を持ってきて、とどめに酔っぱらったおっさんがゲロ吐いて帰ったみたいな臭いがするね」

 言われてみればぴったりな形容だと思った。悪臭が四方八方に大行進しているこの状況をよくとらえている。うっかり感心してしまった。

 感心したって臭いが薄まるわけはなかった。むしろ気づいたから気になった。

「あっちから臭いません?」

「そう?すごいね、この辺一帯だいぶ臭いから私にはわかんないや」

 容赦ない精神攻撃が悪霊を襲う。ユングは明らかにラナが隠れている方を指していた。人類初の偉業、悪霊への先制攻撃、二発目達成の瞬間である。

 偉業って何だろう。わからなくなった人には特に気にせず、できるだけ今まで通りの日常生活を送ることをお勧めする。

 さて、どちらが悪霊だったかわからないほどの責め苦を受けさせられているラナは今更になって先制攻撃をすることに決めた。それでなくてもどこからどう来たかわからない敵意がめらめらと燃えている。

――あの体力・防御力なら一撃で終わる。時間停止を使う必要すらない。

 そう思って手から放ったゴルフボール大の光の球を、ぴたりとイルマの目がとらえた。

 当たれば痛いでは済まないどころか、オーバーキルな威力を持つ銃の魔法だ。額に当たれば上半身が消える。胸に当たれば内臓をまき散らして生首が地面に転がる。

 そんな山吹色を視界にとらえて、彼女は普通に体をひねって避けた。ひらりでもゆらりでもない。「何か来た」「じゃあ避けるわ」みたいな動きだった。慌てる様子も何もない。

 唖然とするラナの視界を魔法弾は通り過ぎ、離れたところの半壊したビルに当たって閃光とともにがれきを増やした。

 ダメージ、ゼロ。

「おっと危ない」暗いんだか明るいんだかよくわからない瞳の中にぽかんと口を開けたラナの顔が映る。「ユングー、やっこさん出たよ。ちょっと小さいけど」

 このときラナが使った魔法は、七月にイルマが使っていた『魔☆シンガン(笑)』と同系統の魔法である。銃の魔法と総称されるアレなのだ。

 光の球のようなものが高速で迫ってきて貫通したり着弾後爆発したりする。人に当たると大体死ぬおっそろしい魔法である。実際、ラナはここまでに何人もの魔術師をこれで屠っている。

 ではなぜイルマには躱せたのか?

 実はイルマ以外でも魔導師は大体躱せたりする。

 弾が大きすぎるのだ。魔法弾であろうとも風の抵抗を受けて失速する。しかも、完全な球体だった。そりゃあ速度が落ちるわけである。

 それでも当たれば死ぬ恐ろしい光の球だ。貫通力はないとはいえ、むしろ弾が大きいことで威力自体は増している。

 しかし、某赤い彗星の言葉のとおり、当たらなければどうということはないのだ。光の球を目で捕捉して、テンパらずにどっちに向かっているか判断して、それから避ければ万事オーライ。追尾型でもやはり慌てず焦らず迎え撃つのみだ。

 このとき、ラナはもう一人のユングの動きには全く目を向けていなかった。

「ほんとですねえ。ちっちゃい子だと手を出すのがためらわれます。話せばわかるんじゃあないですかあ?」

 のほほんとした声を聞くが早いか、ジーンズの太ももから血が溢れ出した。鈍い痛みから幅三センチくらいの切り傷が貫通しているのがわかる。

 酸素ヘモグロビンの鮮やかな赤はジーンズから地面に広がるだけで、剣は汚さない。一気に体が重くなるのを、周囲から魔力と生命力をかき集めて治癒させる。いつ何が起きた?

 魔法弾が風の抵抗を受けるってことは、ある程度固体なのかな?空気抵抗で表面に発生した熱で変な反応しないのかな?そもそも固体じゃないやつがレーザー以外で人を貫通するのかな?

 よくわからないけどここが文系脳には限界であります。受けるんです、風の抵抗。特に発生しないんです、熱。発生したとしても何も変わらないんです。それでお願いします。

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