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病み魔法使いの弟子  作者: ありんこ
マン・フィッチ・ワズ・ラッフィン
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16

 ちょっと息を抜ける回です。何がって、文字数が少ないから。

 少女の行方不明は結局、単なる家出のようだ――ラスプーチンは深く深くため息をついた。

 同級生で、同じ学校ということで周囲は疑っていたが、やはり、消具を使ってしまったわけではないようだ。そもそも使ったら言ってくるだろう。そこは信用していいと思う。

 魔法は欲望によって発動する。ゆえに、欲望をそのまま具現化する具現化の魔法が最良とされるのだ。そして、この具現化の派生と応用が、消具。

 そういうふうに王から聞いたことがある。最後から遡って4番目の王だったか。彼はこうも言っていた。

 富や力を願うのは簡単だが、消去、つまり「何もないこと」を願うのは難しいのだと。だから、具現化の魔法をマスターしても、消具を使うには詠唱が必要になるのだと。

 そもそも、無を願う難しさから、ただでさえいなかった魔法を使える王族の中でも消具が使えるのはほんの一握りだった。

 研究も他の魔法のようには進んでいない。つまりほとんど改良されていないわけで、だから詠唱がいる。

 翻って赤鬼はどうだろう?彼は消具を詠唱なしで使う。いとも簡単に使えてしまう。

 一方の具現はあまり上手とは言えない。化学式で表せるガソリンや薬品の類は作れるようだが、たとえば剣の細部のディテールは甘い。これが複雑な構造を持つ機械などになるとてんで駄目だ。

 王族が読んでいた秘伝書を全く見ていないから、とも考えられるが、だとしたらもっと難しいと言われる消具の詠唱を略せる意味が分からない。

 ものすごく勘がいいだけ、だったら具現も上手じゃないとおかしいし……こうして考えるとき、ラスプーチンはほとんど無意識にある可能性を排除していた。

 赤鬼が心から願えるのは喪失のみであるという可能性を。

「大変だったね、こんなことで疑われるなんて。……あれ、食欲ないの?」

 たまには構った方がいいのだろうかと思って誘った食堂で、向かいに座っている赤鬼の定食がまだずいぶん残っていることに気付いた。無理もないか、同級生の行方不明が起きたのだ。さらに畳みかけるように第一容疑者となった。

「えっ……あ、はい」

「そっか……早く見つかるといいね……家出した子」

 そうですね、と頷きながら赤鬼は内心、首を傾げていた。家出で片付いたことに対してだ。よく家出をするような少女だったのだろうか。

 普通、娘がいなくなったら親は気にするのではないか?普通って俺が言うようなことでもないけれども、常識的に。

 だがそれもこれも、今となってはどうでもいいことだ。

 しむらー、正面正面ー!

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