表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
病み魔法使いの弟子  作者: ありんこ
レッドオーガ
189/398

09

 鬱系の話を書いていると、書く側の精神もそっちへ寄って行ってしまうものなのでしょうか。最近気分が沈みます。やる気は出ないし授業は眠いし髪の毛は痛むし関節は痛いし部屋は何だかかび臭いのです。

 あれ、もしかして梅雨のせい?

「式典ですか?」

「そう式典」ラスプーチンはできる限り赤鬼の顔を見ないようにして言った。「革命の記念日にさ、正装で並んだり名前呼ばれたりするんだ」

 少年は声変わりを済ませていた。通りの良い、甘くて深い声。女顔はそのままで詰襟の学生服はあまり似合わない。セーラー服なら似合うだろうってこともないか。筋肉もつくべきところにはついているし。

「でさ、君って人目を惹きそうだから出てほしいんだよね。フローレスのばーさんがやめて今じじいばっかりだから」

「母に相談してみます」

 そう言って塾があるからと彼は学生カバンを持ち上げた。また、このあと塾があるんです、だ。変わらない。部屋を出ていくのを見送った。

 母親は教育ママとでもいうのか、どちらにせよラスプーチンにはわからないが徹底的な詰め込み教育を赤鬼に課している。それ以上詰めたら頭がカチンコチンになるぞと思わせるくらい。しかし赤鬼は赤鬼で詰め込まれたあれやこれを自家薬籠中のものとしており、自在に使いこなす。

 何かおかしいと思って検査してみたら、彼は集中して見たものを映像で記憶して忘れないことが分かった。決してではない。しばらくしたら忘れる。だが忘れるまでは、完全な映像を記憶する。

 さらに、たった一度の「成功した時」の感覚も絶対に忘れない。あとで思い返して分析できる。体もかなり無理がきく。

 若いからの一言では片づけられないほどに。つまり彼の目の前で拳法の型など披露した日には数日後にマスターされるのだ。

 なにこれ。もう化け物かと。

 それが具現の魔法を独学で会得しえた理由でもあり、短期間でいくつもの魔法をマスターした理由でもあった。

 もし異世界に転生できるならチート能力とかよりこういう地味な能力の方がいるかもしれない。一番の恐怖はここまで規格外の能力値を持っていて彼にそれを誇る素振りがないことだ。

「中学一年生だもんね、表彰したら天狗になっちゃ……わないか」

 本人のあずかり知らぬところでだが、赤鬼は魔導師として国に表彰されることが決まった。

 反撃が始まりましたね。これからは赤鬼の時代です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ