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病み魔法使いの弟子  作者: ありんこ
魔神様の謹製スフレチーズケーキ
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名探偵登場!

 本編に戻ります。時間的には進みます。

 剛志の朝食は美少女手作りのフレンチトーストだった。大皿にこんもり、の盛り付けはともかくここまでのがっかり手料理から一気に女子力が高いものを作ってきたものだ。

 思い返せば蜘蛛に、サラマンダーに、バンバンジーのようなもの。つまり食べ物じゃなさそうなもの、食べられるけどロマンが死んでいくもの、食べられるけどなんか嫌なもの、である。

 ここでやっとあまーい普通の料理!美少女の手作り!やっと異世界トリップ系のファンタジーらしくなってきました!と大皿にこんもり盛られたフワフワのそれを口に運ぶ。

 旨い。甘さ控えめでいい感じ。見た目を裏切らないふわふわしっとりの食感。舌鼓を打っていたらにこにこしながらイルマが耳元にそっと唇を寄せた。微かな吐息が心地よく肌を撫でる。

 心拍数が急上昇する中、どうした?とできるだけクールに聞いてみる。

「――他人の稼ぎで食う飯は旨いか?」

 甘いと思って耳に入れた声は、辛くて重くて胃を締め上げる。全身に鳥肌が立った。

「ごめんなさい!盛り付けが雑だとか思ってごめんなさい!」

 がくがく震える。クールキャラならモテるとか言ったのは誰だ。脅迫されたぞ!言外に脅迫されたぞ!美少女にだ!食欲はフレンチトースト一切れで消え去った。ユングは意にも介さずパクパクと口に運ぶ。無邪気なものだ。

「おいしいです!何ですか?これ」

「あ、知らないんだ……フレンチトースト。子供は大体大好きだけど、あとスイーツ女子とか乙女ぶったアラサーが好きなやつだね」

「アラサー……じゃあ作れたら熟女に受けますかね?」

 さてね、とイルマが答えたところで剛志は違和感を覚えた。何で熟女受けを気にしてるんだ?どんどん減ってゆくフレンチトーストを横目に聞いてみる。

「この世界って一夫多妻制でもあるのか?」

「ないよ?むしろ法廷で裁かれて有り金全部引き剥がされた挙句、名誉もなくして子供がいたら養育費という名目で仕送りを続けないといけなくなるね。どうして?日本はそうなの?」

「そ、そうじゃないけど」

 興味深げに身を乗り出した少女の乳房が揺れるので、目のやりどころに困ってしまう。でかいと思う。ロリ巨乳の正しい用法だ。鼻の下が当社比120パーセント延長する。

「じゃあどうなのさ」

「だって、あんたら付き合ってるんだろ?」

 二人が口を半開きにしていぶかしげに固まる。何を言っているのかわからないとでも言いたげだ。そのまま二人は考え込むようなそぶりを見せて、フレンチトーストを二つ三つ口に運んで、それから言った。

「私とユングは仕事上の関係だよ?」

「そうそう、僕は住み込みの従業員で、奴隷みたいなものだから」

 勘違いしないでよね!剛志にはユングが萌えキャラに見えて来た。ツンデレ系である。あはは……疲れてるのかな俺。過労でまた死亡フラグだ。

「給料がもらえるんだから違うだろ、また適当なことばっかり言って。名誉棄損で訴えるよ」

「ええっ?僕は先生の奴隷なんて身に余る栄誉、はしたなくも尻尾を振ってかしづき賜わるほかに答えるすべを知りませんよ?」

「なにそれきもい」

「きもい……ああ、我々の業界ではご褒美です」

 仕事上の関係かあ。ならまだチャンスは――ないな。この世界は平均が高すぎる。元の世界でまあまあは、異常な不細工。美女ぞろいの国に行ってまあまあがモテようはずもない。

 肩を落としていたらフレンチトーストが食べ尽くされた。不満げに腹が鳴く。栄養不足による免疫低下の死亡フラグ。

 朝のニュースはバスツアーの特集をやっている。朝番組の内容はどこでも同じなんだな。車窓に今巨大生物の死骸が映ったような。誰も気にしていない。それに見るともなく目をやりながら、イルマがにやりと笑った。

「さて、一同を集めてサテと言ったわけだし、そろそろ剛志事件の概要を明らかにしてもいいよね?」

 剛志には最初、イルマが何を言ったのか理解できなかった。

 そして解決編へ……!

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