プロローグ
一話が長すぎたので分割しています。内容としては、旧1部「駅前の魔法使い」の最初の方です。
ファンタジーと言えば、何だろう。もちろん多岐にわたるわけだが、少し古臭いイメージを持つような、剣と魔法なんていうのは?
地に魔物が蔓延り、騎士と魔法使いが民のために死力を尽くして戦ってみたりするのが王道になるだろうか。
そこから少し逸らせてみれば転生して無双する話にもなる。逆に人間を滅ぼす側の立場についてみても面白いだろう。
この話は王道ファンタジーだ。
死霊術師の少女と半人の少年。この主人公たちは剣と魔法でどこまでも旅をするし、戦ったりもする。
人間界には魔物だらけの魔界が隣接している。けれども、もちろんそれだけというわけではない。
幻想的な世界はそこから順当に発達して三百年もの歳月を経た。
科学は魔術に肩を並べ、軍は陸海空に三分され、各国の文化はゆるやかに混じりあってやがて消えていく。思想を通す方法も革命から言論と変化を遂げた。魔法使いだの騎士だのと言っても権威はもはや地に落ちた。
そんな時代の、剣と魔法。
この世界には大きく分けて三つ、大陸がある。
一番大きい大陸とその近海を魔物の地、魔界と呼んでいる。ここではいくつか魔族(知性ある魔物)たちの小国家が日夜覇権を争っていたりいなかったりする。
人間の自治区や好きものの魔族の庭を例外としてここには普通の生物はほとんど生息せず、見渡す限りどこもかしこも魔物だらけだ。
あと二つの大陸と周辺の島々は人間界、こちらは普通の生物と人間の生息地だ。大きい一つを神聖大陸と呼んでいるが、この神聖大陸は魔界の正反対に位置する。
ここから魔界へは岩の塊が点在する大洋を超えるか、すぐ目の前に見える小さいほうの大陸を踏破するかという二つのルートがある。
しかし大洋には船を阻む難所が多いので、レーダーなどが発達していなかった昔、人間にも魔族にもこのルートは利用できなかったため、当然どちらも小さいほうの大陸を踏破する道を取った。
結果として通り道になったこの大陸では貿易が盛んになり、人間と魔族の混血が進んだ。小さいほうの大陸はこのことから貿易大陸と呼ばれる。
雑種大陸というのは神聖大陸に住む人間が差別的につけた古い呼び方だが、決して間違いではないだろう。
この話の舞台であるコルヌタという国はまさに『雑種大陸』の見本であり、国民の98パーセントが魔族との混血児もしくは半人、あとの1,5パーセントは魔族、0,5パーセントがその他で構成されている。
ただし、たいていの場合において人間の遺伝子が魔物の遺伝子の発現を抑えるため混血はしていてもただの人。国境を人間側の三国と接しているおかげで文化は固有のものと外来のものとのごった煮だ。
一方魔界とは、陸路では繋がっていないが、ごくごく狭い海峡を挟んでお隣さんになっている。人間界と魔界の間に細長く壁のように横たわっているのだ。
RPGでいうところの最終面の村みたいなもので、この国が周辺国家から侵略を受けることが歴史上で見ても少ないのは背後の魔界のおかげでもあるのだ。
魔物は普通の動物よりも凶暴で知性をもつものもある。
下手に攻撃して、後の魔界を刺激したら恐ろしいことになる。さらに地理的問題で国土が魔物だらけで土地としての利用価値も薄い。
こんなところだから、いや、こんなところでも、魔導師は国家資格である。
自称するものもあり、それもあってか一般市民には『すごい魔術師』くらいにしか思われていないが本来はれっきとした資格を指すもので魔術師とは一線を画す。
筆記試験・実技試験・面接試験の三つで判定される厳しい条件のため資格を持つ本物はなかなかいない。
さらに厭世家が多く町中にいることはほとんどない。
しかしその街には、『本物の』魔導師が住み――『何でも屋』なるものを開いていた。
その名はイルマ、またの名を『病み魔法使いの弟子』。
――いまだ二つ名を持たない、幼い魔導師である。
「二つ名」と「またの名」の違いについて
二つ名…サラリーマンで言うと、どこどこ産業の課長さん、なんとか物流の部長さんなどと呼んでいる感じ。仕事先でも名乗れるし、名刺に書いていい。
またの名…あだ名。テンパの田中を「てんなか」などともじって呼ぶようなもの。呼ばれる数が多いと二つ名に昇格することもあるが、名刺に書いたら怒られる。
という区別があります。